東京都の指定する不健全図書のみ軽減税率対象外の可能性も……出版業界「有害図書」の動向
#本 #出版
来年10月にも予定されている消費税10%への増税を前に、出版物に軽減税率を適用してもらい雑誌・書籍への増税を回避しようという動きが本格化している。そのために「有害図書」の排除に向けた動きが出版業界内で始まっているといわれるが、実態はどうなっているのか。
「有害図書」を排除することで、雑誌・書籍にも軽減税率を適用してもらおうとする出版業界の動向は、業界紙などで徐々に報じられている。
『全国書店新聞』7月1日号では、6月11日に参議院議員会館で開催された「活字文化議員連盟」と「子どもの未来を考える議員連盟」の合同総会の模様を報道している。
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来年10月の消費税引き上げ時に新聞、書籍・雑誌に対して確実に軽減税率を適用するよう求めていく活動方針(別掲)を採択した。日本書籍出版協会(書協)の相賀昌宏理事長(小学館)は、書協、日本雑誌協会、日本出版取次協会、日書連の4団体が「書籍・雑誌の軽減税率適用に関する制度設計骨子(案)」をまとめ、軽減税率の対象図書を区分する自主管理団体を設立すると報告。書籍・雑誌に対する軽減税率適用を訴えた。
http://n-shoten.jp/newspaper/index.php?e=595
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これらの報道を見ると、軽減税率を適用してもらうための新たな自主規制団体の設立に向けた動きは、本格化しているように見える。だが、具体的な動向はまったく聞こえてこない。どうも、自主規制団体を設立する方針はあるものの、具体的にどのような団体にするのかは、まったく未定のようだ。
さらに「有害図書」にされる可能性のあるアダルト系出版社中心の業界団体である、出版倫理懇話会は、こうした方針に批判も賛同もしていない状態だ。
「4月に、雑誌協会や書籍協会と話し合いの席を持ちましたが、まったく具体的な話は出てこなかった。あくまでも、4団体(日本書籍出版協会・日本雑誌協会・日本出版取次協会・日本書店商業組合連合会)がやっていること。こちらでは、どうなっているのかは、まったくわかりません」
(懇話会加盟社社員)
すでに多くの報道で、新たな自主規制団体の設立が規定の方針のようになっている。だが、それ自体がポーズではないかという観測もある。
「出版業界団体の目的は、軽減税率を適用してもらうこと。そこで、議員に効果的に働きかけるために、軽減税率適用を考える時にネックになる<有害図書>について、業界には自主規制を行う気があるという姿勢を見せているだけとも考えられます」(業界紙関係者)
この見解に立てば、仮に新たな自主規制団体が設立されたとしても、そこで<有害図書>とされる範囲は、かなり限定される可能性が高い。
「もっとも可能性があるのは、東京都の指定する<不健全図書>に準ずるというものです。東京都の指定自体、かなり数は限定されるようになってきていますので、出版業界としても受け入れやすいはずです」(同)
とすると、出版社が自主規制でシール留めや18禁にしている雑誌・書籍は「自主規制されている」というロジックで、軽減税率を適用。不健全指定されたものは、自主規制がされていないから適用外ということになるのだろうか……?
さまざまに批判される東京都の不健全図書指定制度。でも、出版業界内でも「指定される図書は、本来、成人向けコーナーに置くべきものではないのか。すなわち指定には蓋然(がいぜん)性がある」という見方をする人も多いのは、まごうことなき事実だ。
「表現の自由を守ろう」と叫ぶだけなら誰でもできる。さて、誰とどうやって、何を目指して戦いますか……?
(文=昼間たかし)
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