患者大量死の大口病院事件 ささやかれた「呪いのウワサ」は容疑者が流していた?
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横浜市の大口病院(現・横浜はじめ病院)で起きた連続中毒死事件では、殺人容疑で逮捕された元看護師、久保木愛弓容疑者が「20人ぐらいの点滴に混入した」と自供しており、もし、これまで指摘されている48人もの不審死に関連していれば、日本史上最悪の大量殺人事件になる可能性がある。
事件は2016年9月の話だが、実は当時「病院が呪われている。悪霊のせい」などという根拠のないウワサが院内で流れていたことがわかっている。これはフジテレビの一部ニュース番組でも、取材に応じた看護師が「(不審死のあった病院の)4階が呪われているんじゃないか」と話していたことがあった。
当時、別件で病院の調査に入っていたという福祉関係者によると「亡くなった4階の入院患者が死の直前、医療ミスを訴えて“呪ってやる”と叫んだことが発端」だの「その後、他の病院から転院した症状の軽い患者も、なぜかその亡くなった人の名前を知っていて、夢に出てきたと言った後に様態が急変して死んだ」といったウワサが院内で飛び交っていたのだという。
「その呪いのことを、映画の殺人鬼に重ねてジェイソンと呼ぶ人までいて、あまりに悪質すぎる話でしたが、4階は末期がんや重度の患者が入院していて本来、死亡者がいてもそんなウワサが起こりにくいはずなので、誰かが意図して流したとしか思えませんでした。ただ、ウワサ通り、本当に不審死が続出したので院内を震撼させていた影響はあります」
この関係者が調査に入ったのは、別の院内トラブルによるもので、「看護師のカバンに注射器が刺さっていたり、白衣が切り裂かれていたり、特に看護師の間で嫌がらせが続いていて、そういうのまでも“ジェイソン”のせいにするウワサもあった」と関係者。
「久保木容疑者については顔も名前も記憶にないんですが、あの嫌がらせトラブルの加害者もしくは被害者が事件に関わっていた可能性もあります。いずれにせよ、あの妙なウワサが流されたのは不審死や嫌がらせの調査をかく乱する狙いがあったのかもしれないと疑ってます」(同)
大口病院での連続不審死は、わずか2カ月の間に全病床数85に対して死者48人という異様なものだった。久保木容疑者にかけられた容疑は、うち2件にとどまっているが、動機を「勤務中に患者が亡くなると遺族に説明しなければならず面倒だった」と説明していることから、常習的な犯行だった可能性もある。前出関係者の「調査かく乱」があったとすれば、久保木容疑者がウワサを流したことになる。
ただ、捜査中の神奈川県警の人間からは「容疑の2件以外は、遺体がすでに火葬されているので証拠もなく、久保木容疑者が自白しない限り、裏付けが難しい」との話だ。実際に48人を死に追いやったとしても、わずか2件の立件にとどまれば、ウワサの件も解明はできないままになりそうだ。前出関係者は「あの変なウワサが流れた当時、警察はもっと捜査を強めるべきでした」と言う。
「別のトラブルが内部告発された時点で調査することもできたのに、病院側は無視していた。点滴から界面活性剤から出てきたときですら、呑気に『事故でもありえること』と言っていた警察官がいました。当時勤務していた元看護師なのに、話を聞かれたのは半年ぐらい後だったという人もいます」(同)
久保木容疑者は逮捕前にやっていたSNSのプロフィール写真に、美人モデルのものを無断流用していたとの話もある。ある種のサイコパスによる犯行だとすれば、犯行を隠すために悪霊のウワサを流すという幼稚な奇行があってもおかしくはないが、どこまで全容をハッキリさせられるのか、まだ見通しは立っていない。
(文=片岡亮/NEWSIDER Tokyo)
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