『モンテ・クリスト伯』でも好演! 岸井ゆきのは“90年代の深津絵里”の再来か
#成馬零一 #女優の花道
特に意識しているわけではないのだが、なんだか気になる女優が何人かいる。そういう場合、顔と名前が一致していなくて、ネットで調べて「またこの人だ」と思うことが何度もあるのだ。
ちょっと前なら、広瀬アリスがそういう女優だった。深夜ドラマの主演や、プライムタイムのドラマの3~4番手で出ているのを見て、「いいなぁ」と思うことが続いた。
見た目ではなく、演技からにじみ出るたたずまいに惚れ込むので、彼女たちはその後、確実に伸びる。
現在の自分にとって、岸井ゆきのはそういう女優だ。
例えば、先日まで放送されていた『モンテ・クリスト伯―華麗なる復讐―』(フジテレビ系)。本作は19世紀に発表されたアレクサンドル・デュマの小説を、現代を舞台にリメイクした作品だ。
冤罪で逮捕され、異国の牢獄に監禁された青年・柴門暖(ディーン・フジオカ)が、思わぬ幸運で獄中生活から脱出。牢獄で知り合った大富豪の財産を相続し、別人となって自分を陥れた男たちに復讐していくという、ピカレスク(悪者)・ドラマである。
岸井が演じたのは、主人公を陥れた犯人の娘・入間未蘭。
海洋生物学の研究をしている大学院生だが、父親に結婚を強要され、自分の生き方に迷っていたところ、ある青年と恋に落ちる。しかし、入間家の遺産相続の問題に巻き込まれ、義母から毒殺されそうになるという、不幸な女性だ。
岸井は身長148.5㎝と小柄で、劇中では化粧っ気がなく、服装も地味だったため10代かと思っていたら、現在26歳だという。
未蘭のように真面目で勉強ばかりしていたため、世間に疎いまま大人になってしまったのか、どこか少女の面影が残っている女性を演じさせると岸井はハマる。
同時期に放送されていた連続ドラマ『やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる』(NHK総合)では、新人教師・望月詩織を演じた。保護者から「娘が体罰を受けた」と言いがかりをつけられ、生徒との関わり方に悩む役なのだが、話し方や表情が妙に印象に残る。この役も、今まで真面目に生きてきた人なんだろうなぁという感じがにじみ出ていると同時に、影も感じる。
ただ、笑うとどこかユーモラスで、ハムスターのような愛嬌がある。このあたりの明るさと影のバランスが絶妙で、シリアスもコメディもできるのが彼女の強みだ。そして、「選ばれなかった人間の哀しみ」がきちんと演じられる人でもある。
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