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親は子どものSOSに気づけない……日テレキャスターが20年以上の取材で聞いた“生の声”『いじめで死なせない』

「一番つらかったのは、いじめられていることよりも、自分がいじめられるようなダメな息子でごめんなさい、と思うことだったんです」

「いじめられるのは自分が悪いからなんだってずっと思っていました。だから、誰かに相談しようなんて、思ってもみませんでした。自分のいちばん恥ずかしいことは、誰にも知られたくない。認めたくもない」

「親の前ではいい子でいたかったんです。いじめられている自分は本当に恥ずかしい、誰にも知られたくない自分で、いじめられていることをどうしても認めたくないという気持ちもありました」

 そんなためらいの気持ちが、周囲への相談を妨げ、被害者を孤立へと追いやっていく。彼自身もまた、自宅マンションの屋上から飛び降りる寸前にまで追い詰められていた。

 2010年、当時中学3年生だった真矢くんを自殺で亡くした篠原宏明さんはこう語る。

「子どもから『いじめ』っていう言葉が出たら、それはもう赤信号なんです。聞いた大人は、すぐに動かなきゃいけない。『いじめ』っていう言葉は『死』と同じです。『いじめ』は、『死』に直結します。そして子どもは一回しかSOSを出さない。それを見逃したら、子どもは諦めてしまう」

 また、両親と同様に、いじめ被害者の子どもたちが頼りにするのが、教師の存在。しかし、彼らもまた、子どもたちのSOSを容易に受け止められない。多くの教師が大量の業務を抱えており、中学校教師のおよそ6割は、時間外労働が月に80時間超の過労死ラインを超える。その結果「授業以外で子どもたちと話をする時間は1日に10分か15分くらいしかないことも多い」という状況が現実なのだ。さらに、ある教師は、いじめ対策をめぐる構造的な欠陥を次のように指摘する。

「いじめの認知件数は多くていい、と国からは言われるけど、実際問題として、多くていいと本気で思っている教師はいないと思います。教育委員会に対して、いじめが多いと報告すると、どうなっているんだと責められる空気があります。学校の評判に関わるのですから、やっぱりいじめは、ないに越したことありません」

 この構造が、教室で行われる「いじめ」を、「トラブル」や「けんか」として処理する傾向を生み、顕在化しないいじめはエスカレートの一途をたどる。

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