トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > エンタメ > アイドル  > 栗山千明主演のドルヲタドラマを見る
“生涯ドルヲタ”ライターの「アイドル深夜徘徊」vol.7

人生が辛い時ほどアイドルは輝いて見える――ドルヲタを描いた栗山千明主演ドラマ『婚外恋愛に似たもの』レビュー

 さて、一方の昌子である。彼女は、問題ばかり起こしている中学生の男の子を抱えたシングルマザー。スーパーのレジのパートをしながら息子を養っているが、生活は楽にはならない。そんな彼女が心の支えにしているのもまた「スノーホワイツ」。彼女は「ハッチ」こと八王子(太田将煕)のファンである。

 彼女がパートをする高級スーパーに、美佐代が買い物に来るシーンで二人の運命が繋がる。ひょんなことからお互い“ホワラー(スノーホワイツのファン)”であることを知り、話をするのだ。

 ここでは、二人の格差が顕著に現れる。セレブな生活をし、客として食材を買う者と、そこで働く者。しかし、その格差さえも「同じアイドルのファン」ということで、一瞬で消え去ってしまう。これこそが、アイドルファンの中にある自由なのだ。

  そしてもう一つ、二人が「今の現実をつらい」と感じている点も重要だ。アイドルとはつらい気持ちを感じた時に、すっと心に入ってくるものだ。人生がつらければつらいほど、アイドルはより輝いて見える。そんな気がする。この二人もそうなのであろう。

 美佐代は、自分は「一番になりたくてもいつも三番目の女」だと思い悩む。ヒエラルキーの底辺にいる人から見れば、三番目など羨ましくて仕方がないだろう。しかし、人の思い、欲望というものは、相対的に見てしまいがちなのだ。

 アイドルの現場というのは、そんな社会のヒエラルキーをなくしてしまう空間だ。

 もちろん、同じイベントに来た人にも、収入や家庭など差はあるだろう。しかし、好きなアイドルを思い、応援する瞬間において、それらを消し去る力があるのだ。ファンになってしまえば、誰が偉いわけでも誰がみじめなわけでもない。それが根底にあることを知ってもらいたい。おそらくは、このドラマも、その素晴らしさを伝えてくれるものとなっていくことだろう。

 第一話では少しの登場となったものの、他のキャストも見逃せない。

 まずは、女経営者、隅谷雅役の平井理央。元フジテレビアナウンサーのイメージが強いが、もともとは『おはスタ』(テレビ東京)の「おはガール」として活動するなど、アイドルファンにも人気が高かった。実際にアイドル側にいた彼女が、アイドルファンの側を演じるというのが、なんとも面白い。

 主要メンバーの中で一番の「オタク具合」を見せてくれるのではと期待されるのが、片岡真弓役の富山えり子。14年の『ごめんね青春!』(TBS系)や、16年の『重版出来!』(TBS系)など、アイドル女優が出演したドラマにも出ていたので馴染みがあるだろう。今年1月~3月に放送された、芳根京子主演の『海月姫』(フジテレビ系)で、人形オタクの女性を見事に演じていたのも記憶に新しい。ちなみに同作では、昌子役の江口のりこも、個性的な役で出演していた。この二人の掛け合いがまた見られるというのも興味深い。

 最後は、専業主婦・山田真美役の安達祐実。子役時代から積み重ねてきたキャリアでは、アイドル的な曲を出していたこともある。彼女の中で「オタク」という存在がどう消化され、演じられるのかも見ものである。

「婚外恋愛」という不思議なワードが冠されたこのドラマ。「不倫」でも「浮気」でもない愛情の形を見せてくれるのではないかと思っている。

 なお、最後になるが、回想シーンでアイドルのコスプレをした栗山千明はなかなかのサービスショットだった。「男性アイドルファン」がテーマであるだけに、メインターゲットは女性に設定されているだろうが、男性が見ても十分に楽しめる作品となっているし、今後も遊び心あふれる展開を見せてくれるのではないかと期待は高まるばかりだ。

(文=プレヤード)

■ドラマ『婚外恋愛に似たもの』
dTVにて6月22日より毎週金曜日配信

最終更新:2018/12/27 16:52
12
ページ上部へ戻る

配給映画