人生が辛い時ほどアイドルは輝いて見える――ドルヲタを描いた栗山千明主演ドラマ『婚外恋愛に似たもの』レビュー
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今の時代、一口に「アイドル」と言っても、その種類は多岐に渡る。それらをひとくくりに語ることはもはや不可能だろう。ただ、絶対的に大きなくくりとして分けられるのは「女性アイドルのファン」と「男性アイドルのファン」である。
その中で、「女性アイドルファン」については、地下のライブハウスでヲタ芸を打ち、サイリウムを振っているような姿で、ドラマやドキュメンタリーなどで多く取り上げられてきた。しかし、一方の「男性アイドルファン」というものは、あまりセンセーショナルにとらえられることがなかった。ある意味、ヲタクの中でもベールに包まれた存在だと言えるかもしれない。
そんな男性アイドルのヲタクが主人公となった、宮木あや子の小説『婚外恋愛に似たもの』(光文社)が、ドコモの動画配信サイト「dTV」で連続ドラマ化された。6月22日に配信された第一話をチェックしたので、レビューしていこう。
まず注目したいのは、今回の出演者だ。主人公・桜井美佐代を演じるのは、栗山千明。学生時代からモデル・女優として活躍し、男女問わず人気を集めているが、2000年に主演した深夜ドラマ『秘密倶楽部o-daiba.com』(フジテレビ系)では、宮崎あおいやベッキーらと「リアルシスターズ」を結成、アイドルファンからも大いに注目を集めた経歴がある。
そして、有名なのは彼女のオタク趣味。アニメ、ゲーム、マンガなどに造詣が深く、役を演じる上でも、その気質が見え隠れすることがある。昨年放送されたドラマ『でも、結婚したいっ!~BL漫画家のこじらせ婚活記~』(同)では、そのヲタクぶりが遺憾なく発揮され、恋愛に疎いBL漫画家をリアリティを持って演じていた。
第一話でもう一人のメインとなっていたのは、やんちゃな息子に手を焼くシングルマザー・益子昌子役の江口のりこ。言わずと知れた名バイプレーヤーだ。とにかく個性的な役を演じたらピカイチ、作品自体にコミカルさや深みを与えることができる。
今回は、美佐代と昌子との置かれている環境の差がじっくりと描かれていた。子供はいないものの、テレビマンの夫(袴田吉彦)と結婚し、いわゆる「勝ち組」とも言える美佐代。高級マンションに暮らし、ブランド物を身につけるその姿からは、不満などなにもないように思える。
しかし、義母からの「子供はまだか」との催促や、夫の女遊びなどに悩まされる日々。そんな時、街で偶然見かけた男性アイドルに心奪われてしまう。
彼女が夢中になっているのは、5人組の男性アイドルグループ「スノーホワイツ」。中でも「みらきゅん」こと神田みらい(Da-iCE・岩岡徹)が彼女のイチオシだ。彼のことを思っている時が、彼女の唯一の幸せなのかもしれない。
そんなある日、美佐代は、夫から家を出ていくようにと告げられる。もともとアイドル好きの夫は、「KGB64」という女性アイドルグループのメンバー、さなちゃんといい仲になり、一緒に暮らしたいというのだ。男性アイドルヲタの女性が、女性アイドルヲタの夫に別れを迫られるという修羅場の構図。 好きな女性アイドルと関係を持った夫を前に、美佐代は思う。
「好きなアイドルと寝たいとは思わない。でも一晩中独占できるなら、その美しい寝姿をただ眺めていたい」
ここに男性と女性のアイドル観の違いが透けて見える。
双方のアイドルファンの名誉のために言っておくが、アイドル好きの男性が皆アイドルと繋がりたいと思っているわけではなく、もちろん逆に女性がみな関係を持ちたいと思っていないわけでもない。ただ、一般的に、女性アイドルに対して男性ファンが「繋がりたい」という欲求を持つことは多い。
これは、男女の資質によるものが大きいだろう。
「夜空に輝く星を見て、男はそこに行くことを願い、女はそれを手にすることを願う」そんな言葉を聞いたことがある。男性ヲタクと女性ヲタクの違いがあるとすれば、そこに介在するセクシャリティの差だと言えるかもしれない。
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