ポーランド観光局が困惑した“丸投げ”の裏にあったテレビ局の経費削減「通訳に1~2万円払えない」
#テレビ #サッカー #W杯
「FIFAの件でTVからたくさん電話が来ます。ただ、今日の試合の関連番組制作で、ポーランド語でリサーチのできる人材が見つからないため丸投げの印象が非常に強く遺憾です。だれでもネットで調べられる事柄ぐらいは『なる早で全部お願い』ではなく、ご自身でもお調べになられてはいかがでしょうか?」
公式Twitterで困惑を表したのは、ポーランド政府観光局東京支局だ。6月28日、サッカーワールドカップの日本対ポーランド戦を放送したフジテレビの視聴率が平均44.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を獲得するという熱狂の裏で、日本の多数マスコミがポーランド関連の取材協力を、なんでもかんでも観光局に求めたのだという。同局の関係者によると「通訳も込みで選手インタビューのセッティングをお願い」という、観光とは無関係な仲介依頼もあったという。
「ポーランド語の通訳なんていくらでもいるのに、なぜ観光局に聞く必要があったのか」
そう語ったのは、1990年代にポーランドで約6年間、「日本的経営・生産性向上プログラム」など現地支援を手掛けた元JICA(国際協力機構)職員の原晃氏だ。
「ポーランドは“片思いをしている”と言われるぐらい日本が大好きな国です。ワルシャワ大学はヨーロッパで初めて日本語学科を作り、現在も国外での日本語研究の最高機関となっているほど。学生たちの間で日本語は大人気で、各大学で学んだ若者たちが日本で通訳になってもいますから、彼らを起用すればよかっただけでは?」(同)
ポーランドの日本好きにはさまざまな理由があるが、原氏は「ポーランドにとって国を潰される危機にも陥った強敵ロシアに、日本が日露戦争で勝った歴史もありますし、戦乱の中でシベリアに取り残されたポーランド人の孤児たち765人を、日本人が救出した話があって、いまだ日本への感謝が強いんです」と語る。
ポーランドでは大相撲やソロバンなど日本の文化も大人気で、2年前にワルシャワ~成田の直行便も就航した。それだけに、ポーランド戦で、0-1で劣勢の日本チームが後半の消極的パス回しで、それ以上の失点を防ぐ逃げきり戦法は「尊敬される日本人像」を崩しかねない部分もあったが「それでも大半のポーランド人は日本への愛情を失わないはず」と原氏。
それ以上に残念なのは、親日国ポーランドの観光局に迷惑行為ともいえる一方的な協力の押し付けをしていたことだろう。この点について、実際に観光局に問い合わせた情報番組ディレクターに話を聞いた。
「上司からは、日本語の話せる在日ポーランド人を見つけて試合の感想を話してもらい、さらにその人に通訳になってもらって、関係者へのインタビューをしろと言われたんです。でも、どこでそういう人を探せばいいのかわからなくて連絡しちゃいました。正直に言うと、ネットで通訳は見つけましたが、雇うのに1~2万円の費用がかかります。番組では経費削減を強く求められているので、タダでやってくれる人を探していたんです」
結局、このディレクターは自力では日本語の話せるポーランド人を見つけられなかったというが、その理由は単に通訳代をケチったという情けないものだった。
番組ではサッカーに精通もしておらず、面白い話もできないタレントのゲストに約10万円ともいわれる出演料を支払っていたというのに、これだけ注目されるニュースに対して1~2万円の通訳代も惜しんで無関係な人々に迷惑をかけるとは、ちょっと情けない話ではないだろうか。原氏も「せっかく日本の良いイメージがあるのに」と苦笑していた。
(文=片岡亮/NEWSIDER Tokyo)
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