『カメラを止めるな!』に騙される人が続出中!? “新世代の三谷幸喜”上田慎一郎監督インタビュー
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──ぬるい低予算ホラー映画だなぁと思って観ていたら、クライマックスは思わず感動する展開に。完全に騙されました(笑)。ユニークな作品スタイルはどのようにして生まれたんでしょうか?
上田 4、5年ほど前になるんですが、ある舞台を観て、そこからインスピレーションを得たんです。すごく面白いと聞いて観に行ったところ、最初はB級サスペンスっぽい展開で、「あれ~、上演終わった後、なんて感想を言おうかなぁ」と微妙な気分で観ていたんです。すると1時間ほどでカーテンコールになり、「えっ、もう終わったんだ」と思っていたら、そこから舞台裏が描かれるというコメディ展開だったんです。これは面白いなと。それでストーリーも登場人物も変えていますが、この作品の構造を使った映画をつくりたいと、プロットを開発していったのが『カメラを止めるな!』なんです。
──同じ時間を別角度から捉え直す点では、吉田大八監督の『桐島、部活やめるってよ』(12)、無茶な映画製作のオーダーについつい応えてしまう映画人の哀しい性を描いているという点では、園子温監督の『地獄でなぜ悪い』(13)などを連想させますね。
上田 映画ならではの時間軸を遡らせたり、時間を省略させた作品が大好きなんです。『桐島、部活やめるってよ』は劇場で3回観ましたし、DVDでは何十回見直したか分からないほどです。クエンティン・タランティーノ監督の『パルプ・フィクション』(94)や内田けんじ監督の『運命じゃない人』(05)、スタンリー・キューブリック監督の『現金に体を張れ』(56)も昔から好きですね。バックステージものもよく観ています。三谷幸喜監督の『ラヂオの時間』(97)とか。いちばん影響を受けたのは、三谷さんが作・演出した舞台『ショウ・マスト・ゴー・オン』です。副題が『幕を降ろすな』。三谷さんのドラマや舞台は、僕が思春期の頃に見たので、僕にとってはど真ん中なんです。
■本番中のほつれを大事にした
──劇中劇『ワンカット・オブ・ザ・デッド』と舞台裏が綿密にリンクする脚本を書き上げるのは、簡単じゃなかったのでは?
上田 映画の脚本は中学の頃から書いていることもあって、これまで撮ってきた短編映画の脚本はだいたい一晩で初稿を書き上げています。脚本を書くスピードは速いほうだと思います。でも、今回はさすがに時間を要しました。初めての劇場デビュー作ということもあり、2カ月くらい掛かりました。脚本を書く上で難しかったのは、メインになる登場人物が15~16人ほどいるんですが、それぞれに見せ場をつくることでした。今回、ワークショップに参加した新人俳優たちを使って映画を撮るという企画だったので、決して安くはないワークショップ参加費を払って参加してくれた出演者たちに、それぞれに見せ場をつくるという使命があるなと思いました。それに加え、表の芝居とその裏で起きているエピソードをうまく呼応するような脚本にしなくちゃいけなかったので、嫁と生まれたばかりの子どもを里帰りさせて、脚本執筆に集中しました。
──ワークショップ参加者にそれぞれ見せ場を用意したいという上田監督の心配りがあったんですね。苦労した甲斐あって、脇役俳優や裏方スタッフにもひとりずつ人間味があって、それぞれが自分の人生を歩んでいるんだろうなぁということを感じさせます。
上田 そうですね。個性的なキャストが集まってくれたと思います。上映時間が96分なんですが、その中に15~16人もキャラクターがいると観客は混乱しないかなと心配でしたが、みなさんそれぞれのキャラクターを楽しんでいただけているみたいでよかった(笑)。
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