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『一発屋芸人列伝』発売記念著者インタビュー

髭男爵・山田ルイ53世「一発屋芸人とは、“逆白鳥”なんです」

――本当にたくさんの芸人さんがいる中で、テレビに1回出るだけでも大変なことで、そこからさらに売れるっていうのは本当に限られた人たちであるのに、「一発屋=失敗」みたいな風潮もおかしいっちゃおかしな話ですよね。

山田 いや、それはあっていいし、しかるべきですよ。こんな本書いて本当に僕はクソダサいんですけど、お茶の間の方が「この芸はこういうギミックでできてて、こういう歴史があって、だから笑わなあかん」みたいなことは絶対ないわけで。もうただボーッと見るのが、世間のスタンスじゃないですか。芸人が自分から「すごいでしょ」って言うなんてみっともないから、もちろん誰も言わない。ただ僕はこういうご縁を頂いたので、皆が言わない分、自分が犠牲になって言いましょうっていうのはあります。それは書くモチベーションの一つとしてありました。だから基本ダサいことだと思ってるっていうのは、ご理解いただきたいです。

――この本がすごいなと思ったのはまさにそこで、変な言い方ですが、もしかしたら芸人さんを二度殺してしまうかもしれないと。その危険を感じながら書くって、ものすごい緊張感だったのではないかと。

山田 本当に手前味噌ですけど、そのバランスはすごい気にしました。もちろん褒めすぎたらあかんし、こき下ろしすぎるのもおかしいし。だからありのままをなるべく写生するぐらいの、ありのままを言語化するぐらいの気持ちでやってました。

――書く時のスタンスとしては「芸人同士」ですか? それとも「取材者と対象者」みたいな感じですか?

山田 それは……どっちもありましたよね。同じ芸人やっていう意識では、やっぱり書く時に、聞いた時以上にはせなあかんと。最低でも同じぐらいの面白さでは書かないと、スベらせたことになるから。たぶん僕が芸人じゃなかったら、そのへんは許されると思うんですけどね。ただ芸人同士っていうことを意識しすぎると、より突っ込んだ話もできないし。自分の中で、「インタビューする人」っていうのと「芸人」っていうのとの狭間でのせめぎ合いみたいなのはありました。

――この本の生々しさは、そういう部分にも起因しているんですね……。

山田 僕の場合は基本的に自分自身の恨み、私怨みたいなところも執筆の原動力の一つだったから、皆さん話しやすかったかもしれない。ちょっと真剣な話、突っ込んだ話、家族の話、あるいは「想い」の部分を話している時、やっぱり僕とHGさんなり、僕とジョイマンさんなり、僕と相手の芸人さんとの間に脱がれた衣装が置かれたように見えたんですよ。お互い衣装を脱いで、真ん中に置いて、生身の人間でしゃべろうみたいな部分もありました。

――自分の象徴ともいえる衣装を言葉で脱がせていくって、それは本当にインタビュアーとしての理想だと思います。

山田 いや、僕は取材や執筆に関しては素人なので、もちろんすぐにできたわけじゃないです。やっぱりHGさんから始まって、「新潮45」(新潮社)で連載10回やっていくうちに、後半になればなるほど要領を得てきたというか、つかめてきました(笑)。

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