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『一発屋芸人列伝』発売記念著者インタビュー

髭男爵・山田ルイ53世「一発屋芸人とは、“逆白鳥”なんです」

撮影=尾藤能暢

「ルネッサ~ンス」で一世を風靡した……という書かれ方もうんざりするほど経験しているであろう、お笑いコンビ・髭男爵。2008年のブレークから紆余曲折、当事者となった山田ルイ53世が自身と同じ「一発屋」という枠で語られる芸人たちの過去と現在を真摯なインタビューで紡ぎ出した著作『一発屋芸人列伝』(新潮社)が話題を呼んでいる。数々の文豪たちが執筆にいそしんだという新潮社の通称「缶詰め部屋」で、山田ルイ53世が「一発屋」という言葉に抱く思いを訊いた。

***

――「芸人さんが芸人さんの本を書く」というのは、バランスがとても難しいと思うんです。すごい熱い感じで書いてあると、読み手としてはちょっと引いてしまったり。

山田ルイ53世(以下、山田)そうですね。やっぱり身内だから。

――逆にこれをライターが書いたら、それもちょっと嫌な感じがするんじゃないかと。

山田 最初に編集者の方から「新潮45」(新潮社)で「一発屋芸人が一発屋芸人を取材する」というお話を頂いたときは、「ん?」「ちょっと変な感じになりませんか……」って、結構渋ったんですよ。おっしゃる通り、身内同士のかばい合いというか、傷のなめ合いみたいになったらほんまお寒い話ですし、かといって同じ芸人なのに、突き放しすぎるのもおかしい。そういう距離感は本当に苦労したというか、気を使いました。さらにそこに先輩後輩という概念もあって。でもいざやることが決まって、だったら最初はHGさんだなって。

――なぜHGさんだったのでしょうか?

山田 単純に言うと、すごく尊敬しているんです。そもそも「一発会」みたいな一発屋界隈を活性化させるような活動を、別になんの得にもならへんのにやってるんですよ。今のHGさんのポジションだったら安定してるし、普通なら、わざわざ人のためにそんなことやらへんよなと思うんです。だけどHGさんは、たとえば「一発屋総選挙」とか、そういうギミック作りをすごいしてくれてて、我々はそれに乗っからせてもらってる。

――一発屋の活性化。

山田 髭男爵が2008年1回売れて、翌年から堕ちていくっていう過程の中で「ルネッサンスのボリューム小さくなってないか」とか「もっと胸張って伝統芸にしていけばいい」みたいな発想を最初に言いだしたのが、HGさんとムーディ勝山君なんですよ。僕、結構ネガティブなので、そういう考え方は思ってもみなくて、すごく明るい気持ちにさせてもらった。本当に断酒会の主催者みたいなんですよ。皆で輪になって座って、一発屋同士、気持ちを吐露する。HGさんって、NPO法人の代表みたいなところがあるんです。自分のためじゃなく、人のためにやってるっていう。

――断酒会というたとえが出ましたが、そういう会で一番難しいのは「自分はアルコール依存症である」と認めることだという話を聞きます。一発屋と呼ばれる方たちが「自分は一発屋である」と認めることに、苦悩はあったりするものでしょうか?

山田 そうですね。自分の負けとか、ダメなところとか、失敗したことっていうのをゴクリとのみ込むっていうのは、別に芸人じゃなくて人間誰しもしんどいし、できるならやりたくないことだから、そういう意味でやっぱり……生々しくなるんですかね。「一発会」は心のセーフティネットっていう部分もあって。これよく最近みんなで話すんですけど「これからの一発屋の子は楽やな」って。こういう受け皿があるから、ある程度勢い落ちてきたな……ってなっても「一発会入りましてん」っていうネタもできるし。それはひとえに2人のおかげだと思う。

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