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少年期は「万引き」どころじゃなかった“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士に映画『万引き家族』を見せたら……?

“キング・オブ・アウトロー”こと瓜田純士(38)が森羅万象を批評する不定期連載。今回の議題は、第71回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールに輝いた是枝裕和監督の『万引き家族』だ。少年期は万引きよりも悪いことを山ほどしてきたが、近年は家族の絆と社会的規範をことさら重んじる瓜田。果たしてこの映画にどんな反応を見せるのか?

 新宿の映画館のロビーに妻同伴で現れた瓜田が、いきり立っている。どうやら夫婦ゲンカの真っ最中のようだ。

「このバカ女が! てめえが男だったら蹴り飛ばしているところだぞ!」

 何があったのかを尋ねてみると……。

「チャリでここまで来る最中、俺は新宿育ちだから安全かつ最短のルートを知っているって言ってんのに、嫁が見当違いな道をズンズン先に行っちゃうんですよ。ちょっと待て! と言っても止まってくれないから頭に来て」

 妻も負けていない。記者を盾にしながら、涙目になってこう反撃する。

「純士が鈍臭いねん! この運動音痴のバカ旦那を、私の代わりにシバいたってください!」

 万引き家族ならぬドン引き家族と化した瓜田夫妻をどうにかこうにかなだめつつ、急いで劇場内へ送り込む。私語厳禁の場内で2時間ほど映画の世界に没頭させれば、きっと両者の怒りも収まるだろうという期待を込めて……。

 以下は、上映終了後のインタビューである。

 * * *

――いかがでしたか?

瓜田純士(以下、純士) いやぁ、衝撃的でした。このところ、いろんな映画を褒めてばかりいたから、今回はけなしてやろうと思ったんですけど、文句のつけようがないわ。すごい映画でした。

瓜田麗子(以下、麗子) 一言でまとめると、「アカン!」。最高の意味でもアカンかったし、やっていることのデタラメさもアカンかったし、切なすぎるという意味でもアカンかった。もっと早い段階で軌道修正して、もっといい環境におったら……アカン! 思い出したらまた泣けてきた(と言ってハンカチで目頭を拭う)。

純士 この映画の家族は、共依存で成り立っているんですよ。貧困という問題も絡んで、ものすごくいびつな共依存になっていた。結果、法を犯さざるを得ない部分もあったけど、見えない絆みたいなものに依存しつつ、家族が成り立っていたじゃないですか。そこが刺さりました。他人事じゃないな、と。

――他人事じゃない?

純士 はい。瓜田家に置き換えてもわかることなんで。ウチも、他の家とは明らかに違うんですよ。でも、他の家がどうであれ、ウチらが共有している暗黙のルールみたいなものがあって。この映画の家族と瓜田家の違いは、法を犯しているか、いないか、だけ。一歩間違えたらウチだってこうなってもおかしくないと思っているから、他人事じゃないんですよ。もし俺が法を犯すようなことがあったとしても、ウチらは普通に夫婦のままでいると思う。そういう絶対的な揺るぎない絆が、リリー(・フランキー)さんと安藤サクラの間にもあったから共感できたし、泣けました。

――なるほど。

純士 リリーさんは、貧困が生んだ、一つの大黒柱。やっていることはセコイんだけど、絶対の大黒柱なんですよ。それに気に入られたくて一人前になろうとする子どもたちが、気の毒なんだけどいじらしくて、たまらなかったですね。

麗子 リリーの生い立ちまでは描かれていなかったけど、彼もきっとネグレクトで育ったんやろうな。だから不器用で、浅はかで。

純士 リリーさんの「万引き以外に教えられることがない」みたいなセリフが強烈だったね。工事現場でもろくすっぽ役に立たないポンコツだけど、本当はいろんなことを子どもに教えてあげたいという父性を持っている。でも、学がないから、それをできないというね。ド底辺エレジーだわ、これは。

麗子 そんなリリーやけども、家族との間に絆はあんねんな。

純士 それってすごく重要なこと。血が繋がっていても心が繋がっていない家族って、世の中にいっぱいいるじゃないですか。帰るべき家に帰ることが不幸の始まりだったりするという。

麗子 つい先日、目黒で女児虐待死事件があったばかりやろ。それと映画がダブってもうて、涙が止まらへんかったわ。

純士 ネタバレになるからストーリーについてはあまり触れられないけど、まあとにかく衝撃的な作品でした。

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