故・西城秀樹さんを苦しめた「詐欺事件」と「フランス芸術文化勲章」授与の動き
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5月16日に急性心不全で死去した歌手、西城秀樹さんの葬儀・告別式が同26日、東京・青山葬儀所で営まれ、大会場コンサートが開催できそうなほどのファンが参列した。現場にいた記者が「行列の人数を途中4,000人ぐらいまでカウントしたんですが、あまりの多さに数えるのをやめた」と言っていたほどだ。
中には海外から急きょ飛行機で来日して長蛇の列に並んだ人もいて、フランス在住の日本人女性もそのひとり。話を聞くと「彼が生きている間に芸術文化勲章を受章できるよう働きかけていた」という。
「詐欺事件で騙されたのが気の毒で、秀樹さんが受章をしたがっていたのなら、それをかなえてあげたいじゃないですか」
西城さんは5年前、俳優・市村正親の元マネジャーである60代女性から「フランスの芸術文化勲章コマンドゥールを受章できる」と持ちかけられ、関係者への謝礼という名目で720万円を騙し取られたことがあった。
女性は、もともと面識のあった西城さんのマネジャーに直接話を持ちかけたという。ただ、この女性は「一部関係者間では、これ以前から詐欺師として知られていた」と業界関係者。
「聞いた話では、高級クラブに勤めて人脈を広げ、知り合った相手に何かと詐欺をやっていたらしく、芸能プロを経営しているという肩書で、あるときにはテレビのワイドショーのプロデューサーに大物芸能人との出演仲介として“手付金”を騙し取ったことがあったとか。ほかにもメディアにも多数出ている有名なIT実業家に女性タレントとの“デート代”として数百万円、政治家に選挙のウラ集票代で1,000万円とか取っていたという怪しい話がたくさん聞かれました。ただ、被害に遭ってもトラブルを表沙汰にしたくないような人物がターゲットに多かったことで、なお詐欺行為が続いていたようです」(同)
しかし、西城さんには「受章すれば30万ユーロの賞金が出るが、関係者には慣例の献金をしなくてはならない」などと言って金を騙し取った件が詐欺容疑で立件され逮捕後に有罪となっている。
コマンドゥールはフランス文化省が運営する文化勲章の最高章で、歌手ではシャンソンを日本に広めた石井好子が92年に受章したほか、2007年に歌舞伎役者の市川團十郎、10年に映画監督の北野武、11年に女優の岸惠子らが授与されている。西城さんは70年代に「傷だらけのローラ」のフランス語バージョンを海外でヒットさせており、「受章してもおかしくはない」と思わせるところがあったのかもしれないが、これに心を痛めたのが前述のファン女性だ。
「秀樹さんは2度(03年、11年)脳梗塞になって、その後は死を覚悟して自分でお墓を買って“終活”していたほどだったので、後世に名前が残る文化勲章の受章に欲が出たのかもしれません。闘病中の彼を励ましたいとの思いからスタッフが話を信用してしまったというウワサもありますし、だったらその思いをくんで受章に協力できないかと思ったんです」
女性は10年ほど前、外交官の夫とフランスに移住、その夫を通じてフランス文化省に西城さんの受章を推薦する働きかけを続けていたという。
「文化省は過去、移民問題を鎮静化させるための融和政策で、各国の歌手を招いた音楽フェスティバルを開き、これがワールドミュージックのブームにつながったこともあったんです。テロが相次いで以来、フランスでは音楽コンサートの集客がかなり落ち込んでいて、文化省がいろいろと対策に動いていたので、秀樹さんがそこに協力すれば受章のきっかけになるかもしれないと思い、新しいイベント企画を提案したんです。昨年はアメリカのロック歌手イギー・ポップが勲章を授与されていたので、そのシーンを見て秀樹さんもそこに並んでいたらなと思っていたんです」
昭和のスター、西城さんが歌った曲の大半は日本語だが、国外の人々が聴いても受け入れられそうな曲はたくさんあった。前出の女性はこれからも「別の形で秀樹さんの遺したものを世界に伝える活動したい」と言っている。
(文=片岡亮/NEWSIDER Tokyo)
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