アンネ・フランクが不憫すぎる……日記に隠された「黒歴史」の発掘に同情が集まる
夜な夜なノートに、青春の主張や妄想アニメ・ラノベ設定を書き綴る。ある世代より上の人々は、必ず経験したことではなかろうか。
今ではSNSが、その役割の一端を担っているが、2000年くらいまでは深夜にコンビニでノートを買いに走って、噴き出す思いを書き綴っていた人が多かった。「俺は○○を絶対に幸せにする(付き合ってない女のコ相手の妄想)」とか「○○設定集(つくる予定もないアニメ)」とか……ノートに思いの丈をぶつけるしかなかった。
もしも、自分のそんな「黒歴史」が、見知らぬ他人の手によって暴かれたとしたら、まず恥ずかしくて生きてはいられないと思う。まして、死んでから、それらが多くの人の目にさらされるとなれば、それこそ恥だ。
でも、まさか世界的に有名な少女がそんな仕打ちにあうなんて……。
そんな「黒歴史」を暴かれたのが、アンネ・フランク。いわずと知れたホロコーストの犠牲者で『アンネの日記』で知られる人物である。
現在『アンネの日記』として刊行されているものは、オリジナル版ではない。もともとは、強制収容所から生還した父・オットーが、隠れ家生活の支援者から受け取った、隠れ家の床に散らばっていた文書を編集したもの。
さらに、これが公刊される際に辛辣な他者への批判や性に関する記述などは編集が加えられたのである。
ところが、このたびオランダの博物館「アンネ・フランクの家」が研究機関と共同で、最初の日記帳を分析。そこで、のりで紙が貼られていたページに隠された内容が明らかになったのである。
そこには下ネタ・ジョークのほか、自分がセックスについて説明することになった場合にどう答えるか。さらには、売春婦に関する記述として「パリには路地で男を誘う売春婦が多数いて私のお父さんもそういう売春宿に行ったことがある」ことが記されていたのだ。
日記を執筆していた当時のアンネの実像を知ることができる貴重な発見。でも、遠い未来になって、隠していた部分が、見知らぬ他人に暴かれるとは想像していただろうか。SNSには、そんなアンネの気持ちを代弁するような言葉が集まっている。
「黒歴史ノートの全世界配信とか気の毒すぎる」
「黒歴史暴かれるのはつらみがある……」
「アンネ・フランク可哀想すぎる」
「こういうこと書いてる13歳のほうがよっぽど人間ぽくて好き」
第三者の編集によって、どこか聖女のような印象を持たれてきたアンネ。こうした記述の発見で、等身大の少女としての彼女の姿も浮かんでくる。でも、やっぱり黒歴史が発掘されるのはかわいそうだ。
世界的に「黒歴史」への同情があるのか、このニュースを報じる海外メディアの中には、詳細な黒歴史部分の記述を避けているものも多いようだ……。
(文=是枝了以)
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