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“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士&妻と“元リアル極妻”瓜田母は、映画『孤狼の血』をどう見たのか?

母・恭子(左)と、妻・麗子

純士 役者の力もすごかったけど、今回、この作品を最初から最後まで冷めることなく楽しめたのは、「時代設定の上手さ」もデカいと思う。俺もこないだ現代物のノワールを書いたんだけど、主人公の刑事の設定をどこまで過激にしていいのかとか、ここまで書いたら不自然なんじゃないかとか、いろいろ考えすぎた結果、思い切り安パイを取っちゃって、あんまり悪くない刑事にしちゃったんですよ。なんでかというと、時代的に「ウソだろ!」「そんなの今どきありえない!」と突っ込まれちゃうから。でも今回の原作者が上手いと思ったのは、「あの時代だから許される」という設定にしたこと。「これは昭和の話です」という一文を入れるだけで、許されちゃう。俺もその手法を取れば良かったな、と思いましたもん。

恭子 田舎だから特にね。

純士 そうそう。広島だからより一層、刑事とやくざの癒着もあっただろうし、タマも普通に飛んでただろうし。パチンコ屋でパチンコが出なくてパチンコ台を弾いたっていうもん、当時のやくざは。そういう時代性を感じさせる細かいディテールの描き方も良かったですね。

――それは例えば?

純士 やたらとハイライトを吸ったり、ゴテゴテのジッポを使ったり。悪い刑事って格好いいな、と思えちゃうじゃないですか。実際にいたら迷惑ですけど(笑)。あのカチコミに行ったやくざ(中村倫也)が、行く前に景気付けに一発ポン(覚せい剤)を打つとかのディテールも良かった。シラフじゃあんなもん務まらないから。そいつがウワーとか掛け声かけて行くもんだから、そんなことしたら直前にバレて取り押さえられちゃうだろと思ったけど、その見てるほうが不安になる頼りなさってのが、リアルな鉄砲玉っぽくて良かったです。

恭子 あのヒットマンのキチ●イっぽい顔つきを見て、私は昔の純士を思い出したわよ(笑)。開襟シャツ着て目もトンじゃって。うわ、純士の再来だ! 悪夢再び! って。

純士 ヒットマンが走る前に一発ヅケようが、右翼(ピエール瀧)の嫁が家で猟銃をブッ放そうが、そんなの微罪。当時のデコ(警察)は、本線の殺しとは関係ないから引っ張りもしないっていう感じも良かった。揉み消しだったり、潰しだったり、なんでもまかり通る時代だっただろうから。

麗子 薬剤師の女の子(阿部純子)の下着や靴下も、いかにも昭和って感じで懐かしかった。あの子、初めて見る女優やけど、印象深かったな。

――元やくざの瓜田さんから見て、不良描写や暴力描写は、いかがだったでしょう?

純士 親分衆の貫禄も、若い衆の緊張感も、リアルでした。中でも、石橋蓮司。あいつが一番やくざでしたね。

麗子 磯野波平な。波平も良かったわ。

純士 石橋がホステスにセクハラするシーンとか、病院でクチャクチャうなぎを食ってるシーンとか、めちゃくちゃ本職っぽかったですよ。ものすごく下品で、卑猥で、汚れた感じで、いやらしく笑って……ってのが不良の鉄則ですから。実際のやくざはああいうのばっかりで、逆に江口洋介みたいなスマートなのは1人もいませんから。

麗子 江口は『るろうに剣心』のまんまやったわ。

恭子 何それ?

麗子 こないだ、江口が出てる『るろうに剣心』をDVDで見たんですよ。そんときと何も変わってへん印象やった。

純士 江口はケジメを取りに行くシーンは最高に格好良かったけど、いかんせん顔と体型がきれいすぎるというのはあるな。そういやなんで、一之瀬(江口の役)は、モリタカとも呼ばれてたんだろう? 稼業名と本名、ってことなのかな。やくざは江口のことを「男前の一之瀬」と呼んでたけど、ガミさん(役所広司)とかは「モリタカ」と呼んでたから、「それ、奥さんの名前だろ」と思ったんですよ(笑)。

恭子 あ、森高千里か!(笑)

純士 「男前」ってキーワードでどうにかわかったけど、あれ、事前にパンフレットを読んでない人は混乱するでしょうね(編注:江口が演じた役のフルネームが「一之瀬守孝」だと後に判明)。

恭子 私は竹野内豊が物足りなかったわ。いい男で本当に大好きな役者なんだけど、目立たなかったのが悲しい。なんだかしょぼい役だったし、出番も少なかったから。

純士 あれはあれで良かったよ。派手でタチの悪いやくざの実在感があった。リアルさってことでいうと、田舎やくざ(音尾琢真)が外国にかぶれてフィリピンのことを「フィリペン」って発音したりするのも本物っぽかったし、面白かったね。

恭子 商店街の「◯◯ギンザ」とかって看板も、東京に憧れてる地方都市の感じが出てて面白いなぁ、と思って見てたわ。ただ全体的に、昭和63年というよりも、それより10年前の昭和53年っぽい背景だな、と感じたのは、私だけかしら? 昭和63年といえばちょうどバブル絶頂期だけど、その頃は黒電話じゃなくてプッシュホンを使ってた記憶があるから。

純士 それは、東京と広島の違いもあるのかもしれないね。俺は、タバコやジュースの自販機とか、缶ビールのプルタブの形状とかも、懐かしいな、そういやこんなのあったな、って楽しんで見れたし、広島弁も違和感なかった。NHKの朝ドラなんかの昭和はいかにもセットって感じだけど、この映画では各アイテムが町並みにしっかり溶け込んでて、興をそがれることはなかったね。

恭子 NHKの朝ドラで思い出したけど、滝藤賢一! 今あの人『半分、青い。』で松雪泰子とほのぼのした夫婦役をやってるんだけど、『孤狼の血』では目つきから声まで、まるで別人だから驚いたわ。役者ってやっぱ、すごいよねぇ。

麗子 あの人、西川きよしの長男ちゃう?

恭子 違う、違う(笑)。目だけで判断しちゃダメよ。

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