松ケン、蒼井優の投入は映画化への布石なのか!? リーマン地獄門編に突入『宮本から君へ』第5話
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世界卓球の中継延長のため、深夜2時すぎからのオンエアとなった池松壮亮主演ドラマ『宮本から君へ』(テレビ東京系)の第5話。ド深夜にもかかわらず、キャスティングがすごいことに。先輩営業マンの神保役として松山ケンイチが登場。劇場版『デスノート』の新旧Lの共演ですよ! 宮本のライバルとなる大手文具メーカーの営業マンに売り出し中の浅香航大、すっかり味のある俳優となった元「男闘呼組」の高橋和也、「チンポとポンチ」と楽しげに口ずさむ配送部のおっちゃんにボクシングアニメ『あしたのジョー』の主題歌を歌った尾藤イサオ……。次回からは蒼井優もレギュラー出演します。テレビ東京は『宮本から君へ』の映画化を狙っているのかなと思ってしまうほど、贅沢な配役です。いよいよ池松演じる宮本が営業マンとは何であるかを味わい尽くす、サラリーマン地獄門編に突入した第5話を振り返りましょう。
(前回までのレビューはこちらから)
前回、大手自動車メーカーの受付け嬢・甲田美沙子(華村あすか)と初SEXしたものの、あっさり棄てられた弱小文具メーカーの新入社員・宮本浩(池松壮亮)。美沙子の職場にまで押し掛けて自分が棄てられたことをしっかりと確認した宮本ですが、帰り道の足取りは重く、なかなか会社に戻ることができずにいました。個人的な所用で帰社が遅くなった宮本を、会社で待ってくれていたのは小田課長(星田英利)です。大雨と失恋で身も心もズブ濡れ状態の宮本を、小田課長は半ば強引に自宅アパートへと誘うのでした。ほっしゃんの笑顔は、落ち込んだ人間のハートに優しく染み込みます。朝ドラ女優がほっしゃんに惚れたのも、何となくわかるような気がします。
仕事で一人前になるまでは美沙子を抱かないと同僚たちに宣言していた宮本ですが、美沙子に押し切られた形でSEXし、その挙げ句に美沙子は元彼のもとへと走っていきました。モテない人間は「美女と1回でもエッチできてよかったね!」と思うのですが、宮本は美沙子ともうSEXできないことを悔しがっているわけではありません。本気で好きになったはずの美沙子に棄てられたのに、意外と悲しくない自分がいることに気づいたのです。じゃあ、美沙子のことは本気で愛していなかったのかと、宮本はウジウジと自問自答中です。宮本は本当に面倒くさい性格です。
その点、妻帯者であり、一児の父でもある小田課長は大人でした。部下である宮本の一本気な性格を理解しています。妻の友子さん(ぼくもとさきこ)に用意させた温かい手料理を宮本に食べさせた上で、いつになく厳しい言葉をぶつけます。
「自分しか愛せへん、究極のエゴイスト。それがお前や。お前がそのクソ意地とかクソこだわりを捨てへん限りは、人も愛せへん、仕事もできへん。この先、ずっと同じことの繰り返しや」
交際相手と別れても自分のことしか考えられない宮本の偏屈さを、ズバリと指摘する小田課長でした。ほっしゃんは、アメとムチの使い方が抜群にうまいです。朝ドラ女優が惚れたのも、何となくわかる気がします。
ところがまぁ、宮本も意地っぱりです。友子さんが止めるのを振り切って、わざわざ駐車場に置いてある小田課長の車の中で寝ようとするのでした。ついてないときは、とことんついてないもの。小田課長から渡された車のキーを溝の中に落としてしまいます。小田課長夫妻が眠っているアパートに戻ることを良しとせず、寒い駐車場で震えながら夜明けを待つ宮本でした。宮本の長い長い夜は、もうしばらく続きます。
■名刺への異常なこだわり。それこそがプロの道!
正月を迎え、宮本は心機一転のために横浜の自宅を出て、ひとり暮らしを始めることにしました。長年暮らした自宅で過ごす最後の夜、ここで『宮本から君へ』の“生みの親”である漫画家・新井英樹が宮本の父親役で登場です。演技経験まったくなしの原作者を口説き落としたのは、青春暴走ロードムービー『ディストラクション・ベイビーズ』(16)で知られる真利子哲也監督です。27年前に誕生した漫画キャラクターの父親役を、原作者に演じさせるという真利子監督のこだわりが感じられます。芝居経験のあるなしや、演技がうまい下手は関係ありません。過剰なまでのこだわりを貫き、現代社会が見失ったものを見つけることがドラマ版『宮本から君へ』のメインテーマなのです。
好々爺っぽい雰囲気の昭和の父を演じる新井英樹ですが、高校ラグビー部を舞台にした暑苦しい青春漫画『8月の光』(講談社)でデビューした後、文具メーカーに勤めた実体験をベースにした初長編作『宮本から君へ』(同)は若者向け雑誌で「嫌いなマンガ」第1位に選ばれました。さらに『ザ・ワールド・イズ・マイン』(小学館)では漫画史上かつてない大暴走ストーリーを展開させることになります。世間に迎合することなく、己の道を突き進む孤高の漫画家です。そんな暴走漫画家と難役を好んで演じる日本映画界の逸材が小さな呑み屋で肩を並べて日本酒を傾け合うシーンには、形容しがたいムードが溢れています。原作者から力水を授かり、池松演じる宮本の暴走劇はこれから本格化していきます。
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