『瓜田純士に勝ったら10万円』衝撃の結末──! “キングオブアウトロー”のいちばん長い日
#THE OUTSIDER #瓜田純士
だが、圧力に勝る山口の左ストレート、左アッパー、左ローが立て続けにヒット。瓜田はファイティングポーズを崩さないが、ローキックを食らい続けたダメージで足が止まり、左ストレートで大きく吹っ飛び、コーナーに追い詰められる。瓜田は右ストレート、右前蹴りなどで反撃するも、ガス欠であとが続かない。
そして開始2分、パンチの連打を浴びた瓜田が防戦一方になったところで、一度目のスタンディングダウンを取られる。再開後も山口の猛攻は止まらず、コーナーで膝蹴りの連打が決まったところでレフェリーがストップ。試合終了となった。
◯ 山口勇 VS 瓜田純士 ×
1ラウンド2分35秒、山口勇のTKO勝ち。
試合終了のゴングが鳴り響く中、コーナーにしゃがみ込み、茫然自失の瓜田。運営にコメントを促されたが、「惨めになるだけだから」と断り、退場した。
なお、ここでもう一つの“退場劇”も勃発していた。優勝した山口への賞金授与が行われていたリングに、1人のスーツ姿の男性が乱入を試み、セキュリティーに引きずり降ろされ、会場外へとつまみ出されたのだ。よく見るとその男性は、泥酔状態のストロングゼロおじさんだった。
ストロングゼロおじさんが密かに観戦していたと思われる座席の下には、ストロングゼロの空き缶がいくつも転がっていた。彼の強さは未知数のままだが、ストロングゼロはそこそこ強いお酒であることが証明された一幕だった。
控え室に戻った瓜田は、「あの相手、体力もあったし、気合いも入ってましたね」と完敗を認めつつ、悔しさをにじませた。
「試合と練習とでは、全然違うっすね。何度か『いける』と思った瞬間もあったけど、ローが効いたのか足が重くて、どんどん動けなくなっちゃって……。ごめんなさい、と方々に謝りたい。勝たなきゃ意味ないっすよ」
そして大会終了後、瓜田は大会主催者の前田日明(59)の元へ挨拶に行った。
前田 相手はブンブンに振り回してたね。
瓜田 結構面食らっちゃって。ディフェンスも練習してたつもりなんですけど……。
前田 でもちゃんとガードして余分なパンチをもらわなかったし、何年ぶりかってことを考えたら二重丸だよ。ただね、ミットとかサンドバッグの打ち込みの練習量が足りなかったね。反撃しても、手打ちのパンチだと威力がないじゃない。
瓜田 手足が鉛みたいに重くなっちゃって……。いやぁ、格好悪い。
前田 思ってたよりも、ちゃんと試合になってたよ。習い事はね、悔しい思いをしたほうが強くなるんだよ。よかったよ。こんなところでチャッチャッと勝ってさ、調子に乗っても格好悪いだけじゃん? 体だって前と比べるとちゃんとできてるしさ。まだまだいけるよ。
瓜田 もっと本気で取り組もうと思います。
前田 昔、徳川家康は、三方原で武田軍に敗退してさ、馬上でクソを漏らしながら帰ってきたあとに何をしたかというと、絵師を呼んで、自分の一番惨めな姿を絵に描いてくれって頼んだんだよ。彼は終生、ここぞってときにその絵を見て、悔しさを思い出した。今日の試合は、そういう試合だよ。お前にとって。まだ生まれ変われるよ。そのためにはこれからの1日1日が大切になってくる。頑張れよ。期待してるよ。
瓜田 頑張ります。機会をいただいて、ありがとうございました。
前田にパンパンと背中を叩かれ、激励された瓜田。「俺はこのままじゃ終わりません。必ず強くなって帰ってきます」と言い残し、会場を去った。“路上なら瓜田”改め“リングなら瓜田”となるべく、元アウトローの挑戦は続く――。
(取材・文=岡林敬太/撮影=尾藤能暢)
※瓜田純士の人生相談「No problem」
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