池松壮亮の役者バカぶりがさらに激しさを増す!! 美人OLと現実逃避の旅『宮本から君へ』第3話
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社会のルールを守ることは大人の常識ですが、ルールに縛られすぎていては生きていくことが面白くも何ともありません。退屈な社会のルールなら平然と破ってしまう男、それが宮本浩です。新井英樹原作コミックのTVドラマ化『宮本から君へ』(テレビ東京系)を観ていると、裸になった池松壮亮がサウナ風呂のロウリュのような熱風をテレビの中からこちらに向けて吹き込んできます。テレビを観ているだけなのに、視聴者の心は汗だくです。池松演じる宮本の熱さがますますヒートアップした『宮本から君へ』第3話を振り返りましょう。
(前回までのレビューはこちらから)
都内の弱小文具メーカーに勤める宮本浩(池松壮亮)は仕事や生きることに価値を見出すことができずに悩んでいます。大手自動車メーカーの受付嬢である甲田美沙子(華村あすか)と朝の通勤電車で会話を交わすことだけが唯一の楽しみです。美沙子に会うために、毎日出社しているようなものでした。社会人になって初めての秋。24歳になった宮本は美沙子からマフラーをプレゼントされます。美沙子ともっと深い仲になりたいと願う一方、今のお友達づきあいも壊したくありません。恋に仕事に、宮本は宙ぶらりんな状態でした。
11月の終わりの金曜日、いつになく美沙子が駅に姿を見せません。そろそろ電車に乗らないと会社に遅刻してしまうなというタイミングで、ようやく美沙子は現われました。でも、いつもとちょっと様子が違います。宮本の手を握って「どこか行きませんか、会社をサボって。海とか……」。美沙子がどこまで本気なのか、冗談を言っているだけなのか、宮本は女心を計りかねてしまいます。
電車の発車メロディが流れ、意を決した宮本は美沙子と共に会社とは反対方向へ向かう電車に乗り換えるのでした。社会人1年生として仕事のルールを学ぶことに明け暮れていた毎日が、美沙子と会社をサボったことで刺激的でロマンティックな、非日常的な世界へと変貌していきます。
原作コミックが連載されたのは1990年代前半。サラリーマンたちはバブルの世を謳歌していましたが、まだ当時はケータイ電話が一般には普及していませんでした。ある意味、その頃のサラリーマンは会社からも恋人からも首輪を繋がれていない時代でもあったわけです。時代設定は明確にされていないTVドラマ版『宮本から君へ』ですが、宮本も美沙子もケータイ電話は持っていないようです。会社に「急にお腹が痛くなりました」「身内に不幸があったので」などバレバレな嘘電話をすることなく、2人は外房あたりの海へと繰り出していきます。
ガラガラの電車の中、美沙子と2人っきりという駆け落ち気分を宮本は味わい、見知らぬ駅で買った駅弁を半分っこします。美沙子から「あーん」してもらい、宮本はサイコーの浮かれ具合です。これが政治家や官僚なら「ハニートラップかな?」と疑わなくてはいけませんが、小さな文具メーカーの平社員である宮本は、浮かれたい放題に浮かれるのでした。まだ何者にもなれずにいる宮本は、その分だけとても自由な生き物です。
駅弁で食欲を満たした後は、浜辺に出て海を眺める宮本と美沙子でした。平日の海には2人以外に誰も人影がありません。流木に腰掛けた宮本は、隣にいる美沙子の肩を抱き寄せようとしますが、誤って美沙子の頭を叩いてしまいます。「なんで叩くんですか!?」とちょっと怒った美沙子がサイコーにかわいく思えてきます。「肩を、肩を(抱くつもりがね)……」と言いよどむ宮本の言葉尻を美沙子は繋いで「肩を、ちょっと貸してくださいね」としなだれ掛かります。ついに宮本は惚れた女を手中に収める瞬間を迎えたのです。
■華村あすかのたどたどしさが男心をくすぐる!?
美沙子が会社をサボって海を見たがったのには、明確な理由がありました。残念ながら、宮本とデートがしたかったわけではありません。昨晩、交際していた彼と別れ、思いっきり泣くために海を訪れたのでした。宮本はそれに付き合わされていたのです。美沙子からそのことを知らされた宮本は、座っていた流木からまるでワイヤーで引っ張られたかのように後方へビョ~ンと跳び退きます。後ろ跳び世界選手権があれば、確実にメダルを獲得したことでしょう。ここからの宮本は尋常ではない行動に移ります。いよいよ、アブノーマルパーソン・宮本の本領発揮です。
おもむろにスーツを脱ぎ出した宮本は、パンツ一丁になります。「付き合っている人がいたこと、隠すつもりはなかったんです」と謝る美沙子を浜辺に残し、波が高い海へ狂ったように駆け出す宮本。どうやら失恋で気落ちしている美沙子の心のスキに付け込んで、エロい関係になろうとしていた自分自身が許せないようです。会社はズル休みしたくせに、自分の頭の中にある恋愛哲学には厳格な宮本でした。「甲田美沙子がフツーの奴に捨てられちゃダメだろ!」「泣くなら、ひとりで泣け!!」と波にさらわれながら、ズブ濡れになった宮本は叫び続けます。宮本の叫び声は波の音に掻き消され、半分も美沙子の耳には届きません。美沙子は宮本の言動に励まされたというより、むしろあっけにとられています。きっと美沙子は「男はみんなバカだ」と痛感したに違いありません。
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