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日刊サイゾー トップ > エンタメ > テレビ  > テレ東の鉄板を逸脱したケータイ番組

テレ東“鉄板のフォーマット”を、ちょっとだけ逸脱『昔のケータイ、電源入れてみませんか?』が人生に及ぼす影響

■昔のケータイに残されていた亡き母からの檄に目覚める

 

 北海道から上京した男性フリーターも、昔のケータイに電源を入れている。彼は上京前、親から引き継いだケーキ店を営んでいた。

 久しぶりの携帯電話には、母親が映る動画が残っていた。人工関節を足に入れて体が不自由だった母の面倒は、男性が見ていたという。

「母親の介護をしながらお店をやらないといけなくなったんですね。それが、自然と僕の中で生きがいになってしまってたんです。マザコンでしょうね。助けになってあげたいなって何度思ったことか」

 そんな母も、5年前に他界した。そして、彼の心にポッカリと穴が空いた。

「このまま店を続けても意味はあるんだろうかって、ふっと思って」

 上京した彼は、母の私物を東京に持ってきている。この機会に男性は、母が入院中に書いた日記を読み上げた。

「婦長さんが私のところで、椅子に座ってしばらく話をしていた。『今どきの子とは違って母さんによく気をつかう。若いのに珍しい』と言う」

「トシ(男性の名前)は強いから、自分の道をキチンと切り拓けると思う」

 コンビニのアルバイトなどで日々を生きる男性は、決意表明する。

「携帯の中イコール、僕の家族なんですね。(母の声を)改めて聞くと、頑張ろうって気持ちですね、逆に。応援してもらってるんだなって」

 パティシエ経験のある彼の目標は、料理の道に再び戻ること。タイムカプセルの封を解き、忘れかけていた夢を思い出すことができたのだ。

 

■テレ東鉄板のフォーマットを少しだけ逸脱

 

 この番組は、テレビ東京が編み出した鉄板のフォーマットに則っている。『家、ついて行ってイイですか?』や『YOUは何しに日本へ?』、『母ちゃんに逢いたい!』など、街行く人に声を掛ける類の、おなじみのプログラムだ。きっかけ(建前)は異なるものの、全番組が一般人の人生を掘り起こそうとしている。とどのつまり、目的はみんな一緒。正直、切り口をちょこっとアレンジしてるだけの印象だ。

 なのに、『昔のケータイ、電源入れてみませんか?』だけは、着地点が他と違ってるのが面白い。

 何があろうと傍観者の立ち位置を崩さず、人生に影響を及ぼさず、ドライでい続ける他番組。しかし、この番組だけは未来に変化を与えてしまっている。過去と対面する機会を設けたら、人々はなぜか一様にネクストステップを踏み始めたのだ。

 同時に、テレ東自身も新境地を開いていることになる。変わり映えしていないようで、実は密かにネクストステップに進んでいた今回。

 第2弾放送、もしくはレギュラー化の芽もあるのではないか? 期待込みの予測だ。
(文=寺西ジャジューカ)

最終更新:2018/04/24 18:00
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