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日刊サイゾー トップ > エンタメ > テレビ  > テレ東の鉄板を逸脱したケータイ番組

テレ東“鉄板のフォーマット”を、ちょっとだけ逸脱『昔のケータイ、電源入れてみませんか?』が人生に及ぼす影響

テレビ東京宣伝部公式Twitter(@TVTOKYO_PR)より

 学生時代、“未来の自分”宛てに送る手紙をタイムカプセルに収め、校庭の隅に埋めたことがある。当時は確信を持たぬままに行ってたが、後になって掘り起こすと、なんだかんだで興味深い。「あの頃は大志を抱いていたんだなあ」「当時の自分はいいかげんだった……」など、わかりやすくタイムスリップすることも可能だ。

 話は変わって、携帯電話。機種変更を経て無用の長物と化した過去の愛機を、誰しもが持っているはずだ。よく考えると、「昔のケータイ」以上に昔を思い出させるタイムマシンは他にない。どんな友人とどんなやり取りをし、どんな日々を送っていたか。掘り起こしたい過去もあれば、封印していた思い出だってあるはずだ。

 4月22日に放送された『昔のケータイ、電源入れてみませんか?』(テレビ東京系)は、「昔のケータイ」にスポットを当てた特番である。

 

■「昔のケータイ」を見て前向きになれる

 

 大胆な番組だ。唐突に、街行く人へ「昔のケータイに電源を入れてみませんか?」と声を掛けるスタッフたち。携帯電話の中を見せてもらうことが目的である。

 筆者だったら即座に「ヤダよ!」と言ってしまいそうだが、意外にもOKを出す一般人は多い。メリットはある。長年電源を入れないと、充電器を挿しても充電できなくなってしまうらしい。そこで番組は特殊なバッテリー復活マシンを用意、「昔のケータイ」を蘇らせてくれる。開かなくなったタイムカプセルを、この機会に開けることができるわけだ。

 長年の封を解いた携帯には、どんなデータが残っているか? これが、感涙ものだった。ある男性の10年前のガラケーには、病床に伏せる今は亡き父の動画が残っていた。画面の中から、父は男性に語りかけるのだ。

「メシは食わないかんばい!」

 偶然にも、10年後の現在も有効なメッセージ。久しぶりの動画を目にした男性が発した言葉が、この番組のコンセプトを奇しくも説明している。

「見れるだけで前を向ける自分になれたというか。辛いと思った時に見れるっていうのは、ありがたいと思いますね」

 

■封印していた過去に泣き、「やっと終われた」

 

 若い女性も番組からのオファーに応じ、昔の携帯に電源を入れた。まずは中学時代の携帯電話を復活させると、バスケットボールに取り組む女性の画像やメールを発見できる。彼女は青春のすべてをバスケに捧げていたのだ。

 続けて、高校時代の携帯電話を復活させると、そこにはギャルに変貌した金髪姿の女性の画像が……。中学時代の面影は、そこにはない。

「(バスケは)高2に上がるちょっと前くらいで辞めてます」

「私が(バスケ部の)キャプテンをやってたんですけど、試合に負けても笑ってたりとかが許せなくて、いろいろ言い過ぎちゃって。『私たち、もうやりたくない。そんなにガチじゃなかったし……』って、全員辞めちゃって」

「バスケは5人いないとできないので、部活自体がなくなった感じですね」

 決定打は、部活の顧問とたまたま街で出会った日の出来事だった。女性は顧問に胸ぐらをつかまれ、「お前がだらしないから廃部になった。お前がバスケをやってたことは無かったことにする」と恫喝されたという。これを機に彼女は自分を見失い、夜遊びに走る。

「この時は誰とも会いたくないし、『死んじゃった方が楽だな』みたいな」

 女性は、バスケに取り組んでいた経験を誰にも明かさなくなった。

 携帯のデータを掘り続けていたら、バスケを辞めた日に届いた父親からのメールが発見される。彼女を辛うじてつなぎとめた大切なメールだ。

「星(女性の名前)が今も、バスケットが大好きなことも分かっています。だから、バスケットに対する想いにふたをしないでください」

「大好きなバスケを続けてきたことを決して忘れないでください。決して嫌いにならないでください」

 泣きながらメールを読み上げた彼女が、今の心境を語る。

「つらいことしか載ってなかったですけど、逆にそれをちゃんと思い出せたのがよかった。8年くらい避け続けてきた内容だったので。でも、久々に泣けた。ずっと何年もモヤモヤしてたけど、傷付ききれたというか、やっと終われたかなというか、次に進めそうかなというのが自分の中ではあるので」

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