リュック・ベッソン“激怒退出騒動”より深刻な、吹き替えタレントたちの「お粗末」ブッキング事情
#映画 #ゆりやんレトリィバァ
フランス映画界の巨匠であるリュック・ベッソン監督が、新作映画『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』の告知イベントに来日したところ、日本語吹き替え版の声優を担当した、お笑い芸人のゆりやんレトリィバァに不快感を示して途中退場したと一部メディアが報じた。主催者側はそれを否定したが、この顛末よりも映画ファンを落胆させているのが、おなじみ「タレントの声優起用」だ。同作では、ゆりやんのみならず、ロックバンド・THE ALFEEの3人も吹き替えを担当している。
「芸人やバンドマンが吹き替えをやってる時点で、見る気がしない。なぜ本業の声優に任せないのか」
「滑舌の悪いゆりやんが声優とか、人選の理由がわからない」
ネット上ではそんな意見があふれているのだが、これには専門家の映画ライターも同調する。
「今回の映画はベッソン監督にとってかなりの力作で、子どもの頃に愛読していたSF漫画の実写化を、賛否あることを承知で挑んだものです。製作費はおよそ200億円。本人が『僕のDNAが、これを諦めさせなかった。やるか死ぬかの選択だった』と言っているほど。というのも近年、マーベルのアメコミを代表とするスーパーヒーロー映画がやたらと量産されることで、ハリウッド映画の質が落ちていると危惧する向きがあって、ベッソン監督は『みんながマーベルしか見ないようになったらおしまい。もっと観客の視野を広げる』と、あえて流行に挑戦したんです。その映画の声優が、PR目当ての安易な芸人というのは、本当に残念なことですよ」
イベントでは、肥満体のゆりやんが登場キャラクターを模したセクシー衣装で「アイ・アム・セックスシンボル」などと監督にアピール。監督の途中退席があったかどうかは別にして、あまりに低俗なネタであり、少なくとも監督生命を賭けて作られた映画のPRとしてはお粗末だ。
「ゆりやんは夢がかなったとか言ってたんですが、そのわりに声優業の努力の跡はなく、公開アフレコでもNG連発で、真剣に取り組んだ様子はなかった」と映画ライター。
ただ、映画ファンをガッカリさせる芸人の声優起用については、テレビ関係者がその内幕を明かす。
「情報番組のデスクには、声優のキャスティングをしている映画側の担当者が相談にくるんですよ。『誰だったら取材に来てくれます?』って、旬のタレントのリストを見せるんです。そこに並んでいるのは、声優に向いているタレントではなく、話題性があって呼びやすい人ばかり。多くは別のPRイベントによく出ているタレントで、それを見て担当者は『呼びやすそう』とマネするので、右へ倣えで、やたら同じ人選ばかりになるんです。そこでテレビ側は『できたら声優初挑戦だとネタにしやすい』って答えるので、一発屋芸人みたいなのが採用されやすいわけです」
その結果、スポーツ紙の記事になるのは本題の映画よりも、芸人がその場で見せたネタ話ばかりになっている。
「いまや映画の声優やPRイベントは、映画よりもタレントのためにあるようなもの」と前出の映画ライターは語る。
ゆりやんはベッソン退場の話に対し「終始なごやかだった」と否定したが、映画ファンにとってはそんなことどっちでもいい話で、声優をキッチリ務めているのかどうかが重要だ。そこは各自が映画を見て判断してほしいものだが……。
(文=片岡亮/NEWSIDER Tokyo)
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