プロ野球開幕! 野球ファンの心を捉えた好企画と、残念すぎたNACK5ラジオ中継
#プロ野球 #熱血!スポーツ野郎
ついに幕を明けた2018年プロ野球。ペナントレースの行方、個人成績やタイトル争いも気になるところだが、今年は、“野球の楽しみ方”が少し変わるかもしれない1年でもある。野球を取り巻くメディア環境が大きく変化しているからだ。
たとえば、TBSラジオのプロ野球中継撤退。同様に、プロ野球12球団のうち10球団の試合を配信してきた「スポナビライブ」も5月末で撤退。代わって、17年からJリーグの放映権を一手に担うスポーツ動画配信サービス「DAZN(ダゾーン)」がプロ野球界にも本格参入。昨年の2球団(広島と横浜DeNA)から大幅増となる、巨人以外のプロ野球11球団の主催試合をすべて配信することになった。
まさに「黒船来襲」ともいえるDAZNの攻勢。それを逆手に取るように、DAZNは北海道日本ハムファイターズの西川遥輝、横浜DeNAベイスターズの山崎康晃、さらにはお笑いトリオ・ロバートを起用した幕末モチーフのテレビCMを多数打ち続けている。出稿量からいっても、かなりの金額がかかっているはずだ。
これで緊張感が走っているはずなのが、Jリーグの放映権をすべて持っていかれ、1年半で契約者数が20万件以上激減したとされるスカパー! だ。Jリーグの轍を踏まずに、どう乗り越えていくのか? まさに勝負の年、といえるのではないだろうか。
それだけに、開幕に向けてスカパー! が実施したプロモーション「プロ野球12球団レジェンドに聞く あなたはどう見る? #オレ流」は、スカパー! の決意の表れと本気度がうかがえる好企画だった。
スカパー! の広告塔である堺雅人と、元三冠王にして元名監督の落合博満による対談を、そのままCM化したこの企画。15秒CMとは別に、各球団の見どころを約1分半にまとめた映像も無料でWEB公開している。第1弾の「球団見どころ篇」と、第2弾の「注目選手篇」。どちらの動画も企画タイトル通り、落合博満のオレ流節が全開で、野球ファン必聴の面白さだ。
「成績が上がらない=お前ら、練習足らないんじゃないか? もっと野球を勉強しなくちゃいけないんじゃないの?」
「万が一おれが兼任(監督)をやったら、こんな楽なことはない。4番・落合、監督・落合。最っ高に面白いと思う」
「4番? 俺の中ではスーパーマン。なんでもやれる。そして、絶対に休まない。自分の一振りでゲームを左右できるのが4番バッターですよ」
……などなど、落合節は健在。そして、古巣・中日については特に舌鋒鋭く、厳しい見立てをしているのがなんとも言えず落合らしい。
「なぜ俺が中日楽しみだ、っていうかというと、もしかしたら、見納めになる選手が何人かいる。今のうちに見ておかないと、見損なった、というのが悔い残るんじゃないかな、という意味で。勝負度外視して、これだけプロ野球界に貢献した人の勇姿を見逃す手はないだろう。その意味で、中日、面白いです」
野球ファンがうすうす思っていて、でも、なかなか口にしづらいことをあけすけに語ってくれる落合。そんな直球勝負を挑むスカパー! の姿勢には好感が持てた。
そしてもうひとつ。開幕に向けたCMと連動動画企画で秀逸だったのが、プロ野球速報アプリを展開するスポーツナビが実施したCM「PRIDE OF FAN」だ。
こちらは、落合博満のようなレジェンドも、堺雅人のようなタレントを使うこともなく、DAZNのように現役選手が出てくるわけでもなく、徹底的にファン目線。12球団それぞれのファンの「日常風景」を切り取り、そこにスポナビの一球速報アプリが欠かせない存在であることを描き出している。
球団ごとに、シチュエーションもファン気質も、出てくる野球ワードが違うわけだが、その細かいニュアンスの描き分けが見ていてとても心地良い。「スポナビライブ」は5月末で撤退するわけだが、だからといってスポナビアプリの存在意義は揺るがない。そのことを改めて実感させてくれた。
野球ファンの求めるもの、知りたい情報を的確に提示し、好印象を生んだスカパー! とスポナビアプリの両CM。だが、その他に目を向ければ、ファン気質を勘違いした企画を打ち出し、反感を買った事例もある。FMラジオ・NACK5の『サンデーライオンズ』の炎上問題だ。
昨年まで当たり前にいた実況アナウンサーを置かず、番組進行役としてお笑い芸人をメインパーソナリティに起用。それだけでも炎上要素満載だが、さらにすごかったのは、球場から生中継しているにもかかわらず、球音を生かすどころかBGMを流し、「こんなホーム開幕戦はいやだ」など大喜利をしでかしたこと。
私も炎上騒ぎを知ってラジオアプリ・radikoのタイムフリーで聞いてみたが、驚くほど臨場感はなく、そして試合展開はまったく頭に入ってこなかった。まさに、「こんな野球中継はいやだ」状態。ファンが求めているものを理解できていないばかりか、野球というスポーツへの愛情も感じられなかった。
CM・動画企画と実際のラジオ中継。比較対象としては階層が若干ズレているかもしれないが、野球を盛り上げよう、野球ファンの心を捉えようという意味では、あまりに両極端だったこれらの施策。野球ファンはその志の差に敏感に反応し、評価を下すはずだ。
(文=オグマナオト)
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