【平昌パラリンピック】アスリートとメディアの関係性を刷新するかもしれない“成田緑夢の偉業”
#熱血!スポーツ野郎
平昌オリンピックに続いて、前回ソチ大会以上の日本人選手の活躍に沸いた平昌パラリンピック。中でも金メダルに輝いたアルペンスキー女子・村岡桃佳とスノーボード男子・成田緑夢、ノルディックスキー男子・新田佳浩らのインパクトは衝撃的だった。
そんなパラアスリートたちの活躍を連日ダイジェストで伝えてくれたのが『パラリンピックタイム』(NHK総合)。過去のパラリンピックでも同様のダイジェスト番組はあったが、今回の『パラリンピックタイム』を見て感じたのが、“パラスポーツ芸能人”と呼ぶべき存在が明確化されてきたな、ということ。日替わりで、広瀬アリス、武井壮、山里亮太(南海キャンディーズ)らがゲスト出演していたわけだが、彼(女)らに共通していたのは、お飾りの“ひな壇要員”として座っているのではなく、自らの言葉でパラの魅力について語ることができる面々だったこと。そのおかげで、安易な感動話にならず、競技の魅力やアスリートとしてのすごさを浮き彫りにすることができていた。
広瀬、武井、山里らのトークが安心して聞けるのは、付け焼き刃ではないから。彼(女)らの肩書には、決まって「パラスポーツを体験」「パラスポーツを取材」といった言葉が記されていた。
実際、広瀬アリスは『ハートネットTV』(NHK Eテレ)で、さまざまなパラスポーツを体験。今このタイミングでNHKの番組に出ることは朝ドラの番宣にも受け取られそうだが、朝の顔は封印し、いかにパラスポーツが大変か・難しいかを一生懸命に訴える姿は好感が持てた。
武井壮は首都圏で放送中の『ひるまえほっと』(NHK総合)で、「車いすラグビー」「車いす陸上」など、さまざまなパラスポーツに本気で挑戦。パラ競技ならではの独自ルールや特殊な競技環境に最初は戸惑い、失敗しながらも、コツを掴んですぐに上達していく様は、さすが百獣の王。この4月からは『武井壮のパラスポーツ真剣勝負』(BS1)としてレギュラー化されることも決まっている。
そして個人的に意外だったのが山里亮太。実は山里、斉藤工とともにパラスポーツをテーマにした絵画・作文コンクールで審査員を担当するほどのパラスポーツ通。今回の『パラリンピックタイム』においても、「スポーツって、もう進化はしないかと思っていた。でも、パラスポーツはいろんなことを加えることによって、さらに進化をしている。選手も、サポートする方も、みんなでもっともっと上を目指している。まだまだ伸びる。そこがおもしろいんですよ」と、その魅力を的確に表現していた。
そんな一家言持つゲストらを抑え、今回も現地リポーターを務め、番組の顔となっていたのがジャニーズの風間俊介。平昌のNHK特設スタジオで、アナウンサーも置かずに一人で切り盛りする姿は、さすがのひと言。リオパラリンピックの際にも風間のパラスポーツへの造詣の深さには驚かされたが、今大会でも抜群の取材力を発揮。そして、どこまでもパラアスリートへの敬意に満ちた言葉選びが印象的だった。
ジャニーズとパラスポーツといえば、元SMAPの香取慎吾が日本財団パラリンピックサポートセンター(パラサポ)スペシャルサポーターと、朝日新聞パラリンピックスペシャルナビゲーターを担当。パラサポのウェブマガジン『香取慎吾が見たピョンチャン』、朝日新聞の連載『香取慎吾と歩くパラリンピック』で現地の様子を伝えていた。
香取は他にも、自身のインスタグラムにおいて、現地からの画像を連日アップ。結果的に、テレビでは風間、新聞・ネットメディアでは香取と、いい塩梅で住み分けができていたように思う。彼らの勢力図が今後どう変わっていくのかは、東京大会に向けてのひとつの注目点かもしれない。
ただ今回のパラリンピック、「世界への発信力」という意味で、もっともパワーがあった人物は他にいる。スノーボード金メダリストの成田緑夢だ。実は彼、「アスリートYouTuber」を名乗っていて、以前からパラスポーツやスノーボードの魅力を、かなり奇抜な映像企画で訴求し続けてきた人物。今大会では、パラリンピック期間中にもかかわらず、「選手村で髪を切ってみた!」「金メダル初公開!!?」など、平昌の選手村から何度も新作動画をアップし続けていた。
その極めつきが、閉会式直後にアップした「平昌パラリンピックメダリスト集結!??豪華すぎるゲスト!?」。今大会でメダルを獲得した日本選手4名(森井大輝、村岡桃佳、新田佳浩、成田緑夢)が中心となって、43分間の思い出トークを繰り広げたのだ。
日本勢が獲得した10個のメダルすべてが無造作にテーブルに並ぶ中での、アスリートたちのプライベートトーク。こんな企画、NHKでも実現できていない。アスリートにこんなことをされたとあっては、放送局側にしてみれば、たまったモノではないはずだ。
そんな成田がさまざまな媒体のインタビューで、共通して語っていたことがふたつ。「夢や感動、希望、勇気を与えられるアスリートになりたい」。そして、「目の前の一歩に全力で」ということ。YouTuberとしての活動も、その一環であるという。
かつて、中田英寿がアスリートでは先駆けてブログを始め、引退発表までもメディアを通さずに世に広めたように、今後は成田緑夢のようなアスリートYouTuberが、競技の魅力や選手の生の声を伝えていくことになるのかもしれない。
冬季大会だけでなく、2020年の東京大会も目指したいと語る成田緑夢。その発信力も含め、今後ますます目が離せないアスリートになりそうな気配だ。
(文=オグマナオト)
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