「区長がボブスレーに乗ってなくてよかった」下町ボブスレー問題で信用ガタ落ちの大田区に走る緊張感
2月25日に閉幕した平昌オリンピック。羽生結弦選手などの活躍の一方で、赤っ恥をかいたのが「下町ボブスレー」だ。「下町ボブスレーネットワークプロジェクト推進委員会」が、五輪で下町ボブスレーを採用しなければジャマイカ側に損害賠償6,800万円を請求するとした一件。これは、歴史的な“ドン引き事件”として長らく記憶されることになるだろう。
この問題については、テレビ東京系『ガイアの夜明け』が2月27日に「下町ボブスレーの“真実”」と題して問題を特集したり、今後もさまざまな形で検証されることになりそうだ。
そんな中、聞こえてくるのは「下町ボブスレー」をウリにしていた大田区の状況だ。もともと、このプロジェクトは大田区の小さな町工場が中心となり、世界のトップレベルへ挑戦する日本製のソリを作り、産業のまち大田区のモノづくりの力を世界に発信するというコンセプト。
「これまで、大田区の町工場は『設計図を紙飛行機にして飛ばせば、製品が出来上がって戻ってくる』といわれるほどの、高度な技術の集積地でした。そんな長年かけて作り上げてきた信用が、ボブスレーで崩壊しかかっているというのです」(区役所関係者)
実際、大田区の関係者に話を聞くとさまざまなウワサが聞こえてくる。中には、区役所など行政が関わる町工場関係の催しやプロジェクトには、軒並み「待った」がかかっているという話も。ただ、実際に話を聞きにいってみると誰もが「さほど問題にはなっていない」と言いつつ、口をつぐむ。
どうも、是非は別としてボブスレーの件についてはコメントしたくないというのが、本音のようだ。
そうした中で、名前を出さないことを条件に実情を話してくれたのは、大田区役所の幹部だ。
「幸いなことに『下町ボブスレー』には、大田区としては直接関わっている案件ではありません。あくまで、国が一部の町工場と実施していた案件。なので、どういった形で大田区や、ほとんどの町工場は無関係なのだということをPRしていこうかというのが、目下の課題です」
大田区は、区内の産業振興のためさまざまな施策を行っているが「下町ボブスレー」は、区役所が関与しない案件。少なくとも区内では、そのことも認識されているのか、区民からの苦情や意見はないという。
「ただ、町工場への信頼を低下させたのは確かです。町工場の関係者はピリピリしていますから、話題には出せませんよ」
この「下町ボブスレー」が注目された理由の一つに教育出版の発行する小学5年生用の道徳教科書に「下町ボブスレー・・・町工場のちょう戦」という題材が収録された件がある。
この題材のページでは、ボブスレーに安倍晋三首相が乗り込んでいる写真が掲載され、そのことも議論の的になっている。
「いや、区長がボブスレーに乗ってピースとかしていなくてよかったですよ……」
しばし、大田区でボブスレーの話題が禁忌なのは確かなようだ。
(文=昼間たかし)
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