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『快楽ヒストリエ』マンガ家・火鳥《楽しい日々》へのささやかな恩返し

 そんなドタバタしながらの参加だったんですけど、すごい早さで完売して……号泣してしまったんです。

 こんなに自分を認めてくれる人がいるんだと思って。

 そうしたら、うれしいような申し訳ないような気持ちになって……。結局、無意識下では、ぼくもそこまで楽観的じゃなかったってことですよね。楽しさで吹っ飛んだように見えても、いざ作品を携えて机に並べる、本当に売れるだろうかと待つ。どこかで怖かったんです。自分は、何になれるのだろうか。これからの人生はどうなるんだろうか。そんな自分の気持ちを受け止めてもらえた気がして。そうしたら、涙が止まらなくなって……本当に、ボロボロと泣いてしまったんです。後からレポマンガでは「皆さんから頂いたものは、本当にたくさんありました。それは、売上でした」と、茶化して描いたんだけど……そこにも、たくさんの人がコメントをくれて……「ハハハ正直だ」「お金は大事ですよね、火鳥さんらしい」とかね。日頃の行いのせいか、照れ隠しには誰も気付きませんでした。

 本当に、コミケは……あんないい場所ってないですよね。今でも人生のもっとも楽しい場所はコミケですよ。

 * * *

 同人誌を描き、即売会に参加することは楽しかった。そして、楽しさと共に火鳥は東方の同人で活動する人気作家となっていった。さまざまな雑誌の編集者が、火鳥に名刺を切り、仕事を依頼した。中には、自衛隊の広報マンガという一風変わった仕事もあった。作品を描くことは楽しかった。楽しいけれども、マンガ家には、なりきれていない感覚もあった。マンガ家が一人前として認められる一つのハードルが、月刊誌や週刊誌など、出版社から定期刊行される媒体で連載を持つこと。

「えっ!? メイド長のパンツの串揚げは」「大阪では二度づけ禁止!?」
(2016年10月開催の同人誌即売会「東方紅楼夢12」のためのサークルカット)

火鳥 人生に不安はありました。けれど、駄目人間なので、なんとかなるだろうとも思っていました。

 東京に出てきた理由の一つは、結婚したことです。ぼくの性格では、それくらいのきっかけがないと東京には出てこなかったでしょうから、よいタイミングだったと思います。これを機に全てをプラスの方向に動かしていきたいですね。経済的なことを考えても、ページ数の少ない『快楽ヒストリエ』だけでヒイヒイ言ってる場合ではないですから。

 考えることは、いっぱいあるけれど『快楽ヒストリエ』を描くのは楽しいです。やっぱり、歴史はいろいろと思いを馳せることができるから、面白いんですよね。単行本にする時に、解説ページをつくったんですけど、調べていると描きたくなるネタはいっぱいあります。読んでくれている方にも、毎号「次の作品を読みたい」と、思ってもらえたらうれしいです。

 でもね……何巻も続くような作品ではないとも思っています。次第にネタはかぶってくるだろうし……だから、どうやって終わるかも、ある程度は考えてあります。

 それから、次の作品の構想も。

 こういう作品を描いたので、次は下ネタは封印しようかなと思っています。下ネタのインパクトの強さで目立っていますけど、それだけで読んでもらっているわけではないはず。以前、ある編集さんにも「下ネタを封印したら、よい変化が起こるかもしれない」とアドバイスされたことがあるんです。難しいことですが、それはあるかもなと思って。自衛隊の広報マンガでは、もちろん下ネタは封印して、気を使って描いたんですが、いつもとは違う匂いのする作品が出来上がりました。いや、むしろノリは同じかもしれませんが、自分らしい作風のまま、読者層を新しく広げることはできるかなと。自分は、衝動のままで描くよりも、着地点を決めて描くタイプだと思っています。今は掲載誌が「快楽天ビースト」だから、エロマンガの読者に親しみやすい作品を狙う。そういう小器用さはあるつもりです。

 自分は、どうしても描いて伝えたいというものは、あまりないんです。それよりも、ギャグマンガを描きたい。よくTwitterでエゴサーチをしているんですけれど……ぼくの同人誌の感想で「鬱になった時に、火鳥さんのマンガだけは笑えた」というツイートを見つけたことがあって。それを、大事にしなきゃと思っています。

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