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日刊サイゾー トップ > 社会  > “イレズミ訴訟”の行方と業界の動き

「医者じゃなきゃ彫れないなんて、バカげている」“イレズミ訴訟”の行方と、業界団体設立の動きを追う

 海外では、老若男女を問わず、タトゥーが市民権を獲得している。来る20年の東京オリンピックを、吉田氏はチャンスだと捉えているという。

「アスリートは、入れている人だらけじゃないですか。ほかの国では、オリンピック村の近くに彫り師のスタジオがあって、オリンピックに出た記念に入れていく、『俺は出たぞ』と、体に持ち帰るアスリートもいるといいます。事実、日本には腕のいい彫り師さんがたくさんいて、海外から日本の有名な彫り師に入れてもらいに来る人がたくさんいる。日本の和彫りの技術がワールドスタンダードになっていく流れがある中で、もうちょっと開かれた世界にしていく必要がある。なぜ、ベッカムやメッシはよくて、日本人はダメなのか。そのへんのおかしさも、いいかげん一般の人に気づいてほしいなと思うんです」

 とはいえ日本国内では、スーパー銭湯やプール、海水浴場などが軒並みイレズミを入場禁止の対象とし、イレズミを入れていることが広く知られているミュージシャンや格闘家でさえ、テレビの地上波には長袖で隠して出演する。15年には、浅草・三社祭が神輿の担ぎ手にイレズミ禁止のルールを設けた。プロボクシングを統括する日本ボクシングコミッションのルールブックには、出場禁止選手の項目として「入れ墨など観客に不快の念を与える風体のもの」との一文が存在し、皮膚移植手術を受けてイレズミを消してからリングに上がった選手もいた。

 昨今、日常生活の中でイレズミを見る機会が減っていることは事実だろう。そうした国内の風潮と、吉田氏らの活動は逆行しているようにも見える。

「だから、なくしてもいいのか、ということなんです。医者じゃなきゃダメということは、禁止ということ。痛い思いをして体に墨を入れるなんて、変わり者なのは間違いないです。だけど、それが好きだという人がいる。生きがいを見いだして、それで生計を立てている人がいる。そういうマイノリティの人たちを、多数者が一方的に切っていいのか。それは絶対にダメで、自分と違う立場の人たちを尊重し合うっていうのは、社会の基本だと思うんです。これには、イレズミだけの問題じゃなくて、少数者の権利の問題という側面もある。自分の気に入らないものはどんどんないものにして、漂白していくような社会でいいんでしょうか? という思いが、根底にはあります。理想論かもしれないですけど、世の中にはいろんな人がいて、多様性があってこその豊かな社会だと僕は信じているんです」

 仮に増田被告の上訴審で逆転無罪の判決が出ても、協会設立の仕事は続けていくという吉田氏。

「完全に手弁当です。ボスに隠れてカタカタやってますよ」

 ブランキー・ジェット・シティとジョン・メイヤーをこよなく愛する米国生まれの弁護士は、取材の最後に屈託なく笑った。
(取材・文=編集部)

最終更新:2018/02/21 17:00
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