男たち女たちはなぜ競うのか? カンパニー松尾がキャノンボール、アイドル、テレクラ、AVを語る【後編】
#アイドル #映画 #インタビュー #AV
■カンパニー松尾に影響を与えた監督とは?
──2016年に行なわれた新生BiSのオーディション合宿に密着取材した『BiS誕生の詩』を松尾監督は撮り、同じ合宿に同行していたエリザベス宮地監督は『WHO KiLLED IDOL SiS消滅』(17)として撮り上げた。同じ題材を扱いながらも監督が違えば、違った作品として完成する。2人の作品を見比べると、松尾さんのほうがやはり女の子をかわいく撮っているというか、エロく感じさせます。
松尾 やっぱり監督が違えば、編集も違ってくるし、カットの選び方も変わってきます。僕は女の子がかわいいい表情をしているカットを探すのが大好きなんです。監督なんだから、当たり前と言えば当たり前なんですけどね。なるべく、女の子のいい表情を使うようにしています。AV監督もいろいろで、バクシーシ山下は女の子のかわいい映像は撮れないし、撮らなくていい監督でしょう(笑)。その点、僕はポップなAVをつくり続けてきたこともあって、女の子がかわいく映っているイメージシーンもよく挿入してきたんです。
──カンパニー松尾=ハメ撮り、で語られがちですが、カンパニー松尾監督作品は編集や選曲もいい。
松尾 そういう部分で、ごまかしているんですよ(笑)。
──テレビドラマ&劇場版『モテキ』をヒットさせた大根仁監督は、「カンパニー松尾の影響を受けた」と公言しています。逆にカンパニー松尾さんが影響を受けた映画監督を教えてください。
松尾 大根さんは今は違うと思いますけど、『モテキ』の頃はそんなふうに言ってくれて、うれしかったですね。僕が影響を受けた映画監督……。申し訳ないけど、映画はほとんど観てこなかったんです。スピルバーグは一本も観てないし、コッポラもほぼ観ていません。映画監督じゃなくて撮影監督ですが、挙げるとすればクリストファー・ドイルでしょうね。手持ちカメラを使う、広角レンズを愛用するなど、AV監督に通じるものを感じさせます。もちろん、ドイルが撮った映像は比べようがないくらい芸術的ですよ。ドイルは自分でも監督するようになりましたが、僕はウォン・カーウァイ監督とコンビを組んでいた『欲望の翼』(90)や『ブエノスアイレス』(97)の頃がいちばん好きですね。
──松尾さんが「ハマジム」を立ち上げて15年。AV業界の現状は?
松尾 会社経営は年々厳しくなっています。2000年代は1本出すと2000本~2500本は売れていたのが、今は700本程度になっています。売り上げは三分の一に下がってしまっています。全盛期と比べると四分の一です。配信のほうで何とかカバーしていますが、それでも収益は半分程度。多分、AV業界はどこもそんな感じだと思います。収益が半分に減ったら、普通なら会社が潰れるところでしょうが、うちは小さい会社なので何とかやっています。大きな会社は薄利多売でやっていくか、規模を縮小するかしかないでしょうね。劇場版が当たったことで、「ハマジム」としても助かりましたが、単館系での公開なので、すごい収益というわけではありません。AVの可能性を広げるという目的もあって劇場版をやっていますが、うちは本来AVメーカーなので、AVで生き残りたいというのが本音なんです。
──最近のハリウッドでは、セクハラが大きな問題となっていますが……。
松尾 AV業界に限らず、セクハラ、パワハラは、どこの業界でも起きうると思います。AVではセクハラっぽく撮っているだけで、実際にセクハラ、パワハラしていれば、AV業界内で問題になって、干されることになりますね。AVの撮影に限ってですが、「いや」「やめてください」はOKなんです。その先を撮るのがAVですから。中には「殺して!」なんて言う女性もいますよ(笑)。なので、本当にNGな場合は「ストップ!」と言うようにしてもらっています。
──カンパニー松尾はAV監督としても、まだまだ現役であり続ける?
松尾 僕も50歳を過ぎてしんどくはなってきましたが、まだ月1~2本ペースで新作を撮っています。いろんな女性と出会うので、仕事に飽きることはないんです。女性とSEXしてお金がもらえるなんて、幸せなこと。今後も頑張るつもりです(笑)。
──劇場版を楽しんだ人は、カンパニー松尾監督のAV作品も観てほしいなと思います。
松尾 そうですね。『キャノンボール』をきっかけに、AVも観てもらえるとうれしいです。「ハマジム」にアクセスすれば、配信もしていますので。また僕に限らず、『キャノンボール』に参加している監督たちの本業のほうの作品も、ぜひ観てほしいなと思いますね。
(取材・文=長野辰次/撮影=尾藤能暢)
『劇場版アイドルキャノンボール2017』
監督/カンパニー松尾
出演/BiS、BiSH、GANG PARADE、WACKオーディション参加者、渡辺淳之介、高根順次、平澤大輔、今田哲史、カンパニー松尾、バグシーシ山下、アキヒト、梁井一、嵐山みちる、岩淵弘樹、エリザベス宮地
配給/日活 2月3日より渋谷HUMAXシネマほか全国順次公開中 R15+
(C)2017 WACK INC. / SPACE SHOWER NETWORKS INC.
http://idol-cannon.jp
●カンパニー松尾
1965年愛知県春日井市出身。テレビ番組の製作会社勤務を経て、AV制作会社で働くようになり、87年に安達かおる率いるV&Rプランンングに入社。88年に『あぶない放課後2』で監督デビュー。全国のテレクラを回った『私を女優にして下さい』や『燃えよテレクラ』は人気シリーズとなる。95年にV&Rプランニングを退社し、フリーのAV監督に。2003年にAVメーカー「HMJM(ハマジム)」を立ち上げ、現在に至る。レース形式でAV監督たちが目的地までのスピードとナンパした女性とのエッチ体験を競い合う『テレクラキャノンボール』は97年からスタート。『テレクラキャノンボール2009 賞品はまり子Gカップ』はその年の「AVグランプリ」にてプレス賞を受賞。『テレクラキャノンボール2013 賞品は神谷まゆと新山かえで』は2014年に劇場公開され、大反響を呼んだ。その他、劇場公開された監督作に『劇場版BiSキャノンボール』(15)、『劇場版BiS誕生の詩』(17)がある。
http://www.hamajim.com/home.php
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