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実証!!“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士に取材を申し込んで、記者が「遅刻」したらどうなる……?

――楽しんでいただけて何よりです。『蹴りたい背中』という言葉が出たということは、綿矢りさをよくご存知なんですか?

純士 20代半ばの頃、刑務所に入ってるときに『蹴りたい背中』を官本(編注:刑務所が無料で受刑者に貸し出す本)で読んだんですよ。内容はあまり覚えてないけど、若いのにすごいな、と思ったことだけは覚えてます。あと『インストール』も途中まで読んだけど、今回の『勝手にふるえてろ』は未読です。でもきっと、原作がめちゃくちゃ面白いから映画も面白いんだと思いますね。

瓜田麗子(以下、麗子) ウチはこの映画を見て、ヒロインマジックってすごいな、と思った。あの主役の女の子は最初、アジアンの隅田にしか見えへんかったのに、それが吉高由里子になり、最後は満島ひかりになってたから、すごいよね。どんどん可愛くなっていくねんもん。

純士 その視点なんだな、女子は。俺の視点は違う。あのヨシカっていう主人公は、釣りのおっちゃんに向かって「SNSに何かを書くのは恥」とか言ってたけど、なりすましてた別人のSNSでは自殺をほのめかしたりしてましたよね。そのへんの複雑な人間心理にも焦点を当ててるあたりに感心した。やっぱ俺も物書きだから、原作者の文章はすごかったんだろうな、ってところをまず想像しちゃうんです。ヒロインのビジュアルよりも、これを表現するには原稿用紙を何枚使ったんだろう? ってことを、まず考えちゃう。作者に対する尊敬の念を抱きながら映画を見てました。もちろん、ヨシカを演じた女優もすっごく上手かったですけどね。俺は原作を読んでないけど、きっとあの子は原作を隅々まで読んで、原作者の意図を汲み取って、自分なりに咀嚼して、演じ切ったんだと思う。

――あの子、松岡茉優という売れっ子なんですが、ご存知なかったですか? 映画は今回が初主演ですが、ドラマでは何度も主役を張っていますよ。

麗子 全然知らへんかった。ウチ、ドラマはあんま見ぃへんから。

純士 俺も初めて見たけど、いい女優だね。

麗子 演技が自然やから、肩の力を抜いて見れたわ。

純士 あと、監督の手腕もすごいと思いましたね。

――具体的にはどういう点が?

純士 信号機のメロディや卓球の音を効果的に使ったり、弱ったヨシカがオフィスの廊下を歩きながら壁に向かってアンモナイトを撫でるような仕草を見せたり。とにかく終始気の利いた、飽きさせない描写があったじゃないですか。芸が細かいし面白いなぁ、と感心しましたよ。あと、ヨシカとニが変なクラブで初デートしたとき、ニが反復横跳びを始めるでしょ。それをヨシカが「おいおいマジかよ」といった感じで冷めた目で見てる。ああいう、観客まで恥ずかしくなって冷や汗をかいちゃうような場面が多々あったじゃないですか。そのあたりの表現方法も巧みでしたね。

麗子 ウチも序盤は遅刻の件でイライラして、なかなか集中できへんかったけど、反復横跳びのあたりから作品の世界に入り込むことができた。でもヨシカは、あの男とは幸せにはなれへんと思ったわ。あの男は、追いかけてる自分が好きなだけやから。

純士 結局、出てくる人間はどいつもこいつも身勝手で自己中極まりないんですよ。こじらせた奴って、絶対に自己中なんですよ。それが今回わかったことですね。うちの嫁が言う通り、ニは相手が好きというより、自分が好きだから自分の恋愛を成功させたいだけ。だから相手の迷惑を顧みない。

麗子 ニみたいな男は絶対、相手が振り向いた瞬間に、浮気はするわ、連絡はおろそかになるわ、亭主関白になっていくわ、ってタイプやと思うわ。

純士 ヨシカはヨシカで、常に相手のことなんか考えてなくて、ニのことも最初は「私の世界に勝手に現れやがって!」ぐらいに思ってる感じだった。小さな頃から見下されて育ってきたせいか、「自分のこんなちっちゃい脳内世界を私なりに守って生きてきたのに、その暮らしを脅かす奴が勝手に現れやがって!」という被害者意識を持ってて、相手の心中を読もうとしない。ぶっちぎりで自分脳なんですよ。でもそこが面白かった。

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