「大学を何だと考えているのか」とは? 大学教員の怒りの発言で、再び火がつく“学生に教科書を買わせる”問題
#教育
大学教員が、授業で自分の著書を学生に買わせるのは、どうなのか?
過去、数十年にもわたって地味に続いてきた問題が、改めて注目を集めている。
発端となったのは、マルクス主義研究者である田上孝一氏に対して、同氏の授業を受けている学生の発したツイート。
このツイート、プロフィール欄に自身の大学名と学科名を書きつつも「お前さ、授業の最初に1200円のやつ買わせといて、いきなり期末レポートで3000円の本買わせるなんてゲスだな。」と、乱暴な言葉をぶつけているのである。
田上氏は、これに猛然と反論。
「レポート課題図書は買う義務はないと繰り返し言ったではないか。買いたくなければ買わなくていい。」
「この学生からすると、課題図書を読ませるレポートを出してはいけない、または文庫や新書のように1000円以内にしろということだろうか。大学を何だと考えているのか?」
「自分の本を教科書にし、自分の編集した本をレポート課題図書にして、どこがいけないのだ?」
……などと、怒りのツイートを連投したのである。
マルクス主義研究者としては多くの著書を持つ田上氏であるが、そのキャラクター性にはさまざまな逸話も。ある研究会では、司会のはずなのに、質問者に「何冊も本を出している私に、何を言うのか」と反論したという目撃談も。
本来、乱暴なツイートをぶつけた学生にも非があるはずなのに、それに反論するツイートの強烈さゆえに、問題は大学教員が学生に授業で必要な教科書として特定の書籍を買わせることの是否へと、飛び火している。
長らく大学教員の間では、学生に教科書と称して自分の著書を買わせる悪習が続いてきた。というのも著書の多くは学術専門書。まったく売れない本だけに印税はゼロ、出版社から現物を渡され、それを売って補填というケースも多かったからである。
「自分たちの時代と違い、今の学生に教科書を買わせるのは気が引ける」
そう話すのは、都内の大学教員。この人物によれば、多くの教員は本、とりわけ自著を買わせることには、とりわけ気を使うという。
「大学進学が当たり前になった昨今。学生の経済事情もさまざまです。1,000円程度ならともかく、3,000円の学術書なんかになると、どんな良書でも、これは学生に役立つのだろうかと疑問を持ちますね。少人数制の授業以外は、参考図書を示す程度にしていますよ」
学生に著書を買わせて儲けるというビジネスモデルは、もう成立し得ない。そして、このプチ炎上が教えてくれるのは、キレやすい大学教員には相当に困るということか……。
(文=是枝了以)
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