作家・鈴木光司と貞子は背中合わせの関係だった!! 原作者が語る『リング』が生まれた原風景とは?
#映画 #インタビュー #長野辰次
2018年は劇場版『リング』(98)が日本中を震撼させてから20年となる。呪いのビデオから這い出てきた貞子はその後増殖を続け、韓国版やハリウッド版も生まれ、恐怖のウイルスは世界各地へと広まっていった。ハリウッド版の新作『ザ・リング/リバース』の日本公開を1月26日(金)に控え、貞子の生みの親である作家・鈴木光司氏が、『リング』シリーズがロングランヒットする秘密と貞子が誕生した原風景について語った。
──中田秀夫監督が撮った劇場版第1作『リング』で、テレビ画面の中から貞子が這い出てくるシーンはあまりにもインパクトがありました。原作者である鈴木さんは、Jホラーブームを巻き起こしたあの第1作を、どのようにご覧になったんでしょうか?
鈴木 シナリオを事前に読んでいたので、当然、内容は知っていました。面白いことを考えつくなぁと思いましたね。原作小説には貞子がテレビから出てくるシーンはないんです。小説で描いても、貞子の怖さは伝わってきませんしね。映像のよさが活かされた劇場版でした。映像から這い出てきたことで、貞子というキャラクターが定着していったといえるでしょうね。
──そんな貞子の怖さは、ウイルスのように世界へと広まっていった。中田監督が撮った『ザ・リング2』(05)以来となるハリウッド版『ザ・リング/リバース』は、若手のF・ハビエル・グティエレス監督が『リング』シリーズの面白さを汲み取った上で、現代的にアップデートしたものになっています。
鈴木 僕が書いた小説を、ハビエル監督はしっかり読んで研究したなと思いました。ナオミ・ワッツが主演したハリウッド版第1作『ザ・リング』(02)の頃は、まだ僕の小説の英訳が出てなかったんですが、今では英語版も出ているので、今回は、かなり原作を読み込んできたなという印象を受けます。貞子(ハリウッド版ではサマラ)に対する愛情も感じさせ、薄型テレビから出てくるシーンがちゃんと用意されていますしね。
■オカルト現象と科学とのボーダーに潜むもの
──主演の若手俳優マチルダ・ルッツとアレックス・ローが序盤は延々といちゃいちゃしているシーンが続くんですが、中盤以降は愛する恋人を呪いによって失うかもしれないという恐怖へと転じていく。実は『リング』シリーズは愛の物語だったことに改めて気づかされました。
鈴木 主演の2人は初々しいカップルで、とてもよかった。確かに『リング』は愛をめぐる物語なんです。原作小説は妻と娘を守るために懸命に闘う父親の物語でした。これを中田監督の劇場版は松嶋菜々子さん演じる母親を主人公にして、母親が息子を呪いから救おうとするドラマにアレンジしたわけです。今回のハリウッド版は恋人を救うためのストーリーになっています。やっぱり、『リング』は愛する人を失うかもしれないという恐怖が描かれているから、多くの人を魅了したんだと思います。小説って、読者の想像力をどれだけ刺激できるかが面白さの決め手になるんです。自分自身の記憶に置き換えることで、物語がリアルに感じられるわけです。映画版も同じで、自分の大切な人がもし残り1週間の命だったらどうしようと考えるから怖く感じるんです。
──コケ脅し的な怖さではないから、『リング』シリーズはロングラン人気を誇っているわけですね。
鈴木 そう思います。愛する人を失うかもしれないという恐怖が、『リング』の骨格なんです。僕は言ってみれば“貞子遣い”なわけなんだけど、貞子自体は別に怖くはないんです。すでにプロ野球のマウンドに登板するようにもなっているわけで(12年と13年のパ・リーグの始球式イベントに貞子が登場)。もう、貞子は面白キャラになっちゃってますからね(笑)。
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