「講談社OBとして恥ずかしい!」名物編集長が“斜陽”の週刊誌業界に喝!
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ここからはサンデー毎日に掲載された「知の巨人」たちの安倍首相の経済政策や日本の暗い未来についての考えを紹介したい。まずは大長老・伊東光晴の「本気の直言」。
「中曽根康弘政権がその典型だったように、過去の財産を食い潰してきた。国鉄、電電を民営化してその株を売却するなど、明治以来の財産を食い潰し、とりあえず今の生活を維持する、ということをしてきた」
「原子力発電と同じだ。原発は放射性廃棄物という処理不能のゴミを出しているが、何とかなるだろうと言って発電を続けている。このとりあえず主義は、日本の庶民の心に深く根差しており、それに対抗する明治以来の西洋合理主義と、さまざまなところでぶつかり合うが、ほとんどがとりあえず主義の勝ちとなっている。国債発行、原発……。皆、根っこは同じだ」
伊東がいっているのはこの二つ。日本人のとりあえず主義と、過去の遺産を食い潰して現在まで来てしまったということだ。
インタビューアーの倉重篤郎はこう結んでいる。
「アベノミクスは、日本の死に至る病だ、と私は書いたことがあった。成長至上主義という病と、次世代に対する過剰な依存症により、経済メルトダウンに至るような、とんでもないツケを将来世代に負わせているのではないか、という見立てである。伊東氏は『日本政治のとりあえず主義』が『未来を食い潰す』と表現された。同じことを言っている、と思っている」
次は内田樹。橋本治が書いた『九十八歳になった私』を取り上げ、こう論じている。
「日常を活写した小説の『あとがき』に橋本はこう書いている。
『「三十年後の近未来」を考えたら、今や誰だって絶望郷(ディストピア)だろうう。そのことを当然として、みんなよく平気でいられるなと思ったけれど、「じゃ、どんなディストピアか?」を考えたら面倒臭くなった(……)。「ディストピアを書くったって、現在の自分の立場を安泰にしておいて、暗い未来を覗き見るんだろう? それって、何かフェアじゃないな」と思い、「そうか、自分をディストピアにしちゃえばいいんだ」というところへすぐ行った』
橋本はここでとても大切なことを書いていると私は思う。それは『現在の自分の立場を安泰にしておいて』なされる未来についての想像は『フェアじゃない』。だから、同じように『現在の自分の立場を安泰にしておいて』なされる過去の回想も『フェアじゃない』のだと思う。
過去30年を振り返るとしたら、『こんな日本に誰がした』というような言葉づかいは自制すべきだろう。他ならぬ私たちが「こんな日本」にしたのである。
同じように30年後の日本について語るときも、それが絶望的な見通しであればあるほど、その社会でリアルに苦しんでいる老残の自分をありありと想像した上で、『そうなることがわかっていながら、止めることができなかった』私自身を責めるべきなのだ」
ここでも、とりあえず、まあいいか、と考える日本教が、未来を食い潰すといっている。
週刊現代の2017年12月16日号に載ったアメリカの投資家「ジム・ロジャーズ」の言葉を引用している(詳細は以前書いたので、バックナンバーを読んでください)。
ロジャーズは「このままいけば、いま日本人の10歳の子どもが40歳になる頃には、日本は大変なトラブルを抱えていることでしょう」といっている。
「投資家の言う『大変なトラブル』の一つはこれから後『無慈悲で不人情な社会』が行政主導・メディア主導で作り出されてゆくだろうということである。それについての危機感が今の日本人には感じられない。だから、この暗鬱な予測は高い確率で実現すると思う」
編集者というのは、自分が思っていること、いわなければならないことを、他人の言葉をもって、いう仕事である。
私も根っからの編集者だから、こうして、いろいろな雑誌から「引用」するもののいくつかは、自分が考えていること、自分が今いわなければならないことを、他人の言葉を用いていっているのである。
伊東や内田がいっていることは、いま生きている日本人は、各人が切実に自分の30年後を思い描くべきだということだ。
もはや手遅れだろうが、それでも、しないよりしたほうがいい。
この国は荒れ果て、人心は荒廃し、財政は破綻し、病人や足腰の立たない年寄りは放置しておかれる。
少しでもそうならないために、いまどうするか。わかりきったことである。安倍のやっている財政再建そっちのけの金融垂れ流し政策をすぐに止めさせ、大企業や金持ちに対する税金を増やすことである。
GDPの2倍になる1,000兆円の借金について、子どもから年寄りに至るまで、どういうことか教育することである。
そうすれば、少子高齢化は止められないが、財政破たんはかろうじて回避でき、弱者救済政策もかろうじて継続できるかもしれない。もはや時間はない。考えよう、自分の10年後、20年後、30年後を。
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