スポーツ熱の高まりと、スポーツ熱のある人々と──「2017年スポーツメディア考」
#熱血!スポーツ野郎
2020年の東京オリンピック・パラリンピックが着々と迫る中、2017年のスポーツメディアはどんな盛り上がりを見せたのか? 印象深かった番組や特集企画などをおさらいしたい。
■スポーツ系番組で求められ始めた「熱量のあるプレゼン能力」
今年、スポーツ系番組で最も秀逸だったと思うのが、Amazonプライム限定コンテンツ『有田と週刊プロレスと』だ。Amazonレビュー評価では、星5つが88%。各種マスコミレビューでも、いい評判を見かけることが多い。
くりぃむしちゅー有田哲平が毎回1冊の「週刊プロレス」をテーマに、語って、語って、語りまくり、プロレスから学ぶべき人生の教訓を伝授する……というプロレストークバラエティ。始まったのは昨年末のことだが、そこから今年5月までがシーズン1。2カ月半のブレークを挟んで、すぐにシーズン2がスタート。民放の各種番組がどこかぬるい企画を続けるなか、有田とこの番組スタッフの熱量の高さは実に痛快だった。
『有田と週刊プロレスと』が革新的なのは、スポーツ系番組の“核”ともいうべき、試合映像が使えない(使わない)点にある。その代わり、肝となるのが有田の話芸であり、モノマネ力であり、プレゼン能力だ。
もちろん、過去にもトーク力を生かしたスポーツ系番組はあったが、ここまで徹底して試合映像を使わないものはなかったはず。その無謀な企画を可能にしているのは、有田の異常なまでのプロレス知識であり、プロレス愛であり、そして何よりも歴史を知っていることにある。
スポーツファンにもいろいろな層があって、中には歴史には興味がない、という人も意外といる。それどころか、過去の名選手・名試合について興味がない、という現役アスリートも実に多い。だが、その競技のことを真剣に考え、認知度を高めていく上では、歴史を知ることも重要のはず。有田もまた「歴史を学んでください」と番組内で何度も口にする。とことんマニアックでありながら、どこかアカデミックな印象もあるからこそ、プロレスファン以外からも支持を集めるのではないだろうか。
同様に、マニアックな知識で競技愛を発露したのが、ボクシング中継における俳優、香川照之の存在だ。実は10年以上前から、香川の熱狂的ボクシング愛は変わっていない。だが、村田諒太が22年ぶりにミドル級世界王者になる、という快挙も手伝って、フジテレビの中継でゲスト解説を務めた香川のボクシングトークにも日の目が当たった格好だ。
SNS上での香川照之ボクシングトークへの評判は、正直なところ否定的な声も多い。だが、香川の圧倒的なボクシング知識は、今後、ボクシングファンの裾野を広げるのに大きな役目を担ってくるのではないか、と勝手に期待している。世間的には『昆虫すごいぜ!』(NHK)での怪演ぶりの方が話題だが、「2017年の香川照之」という意味では、ひとくくりに覚えておきたい。
マニアックな競技愛をこじらせた結果、その競技の伝道師となった有田哲平と香川照之。来年以降、同様の存在が、他の競技でもどんどん出てくるのではないだろうか(というか、出てきてほしい)。
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