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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 2017年テレビ事件簿【バラエティ編】
テレビウォッチャー・てれびのスキマの「テレビ裏ガイド」特別編

テレビウォッチャー・てれびのスキマが選ぶ、2017年のテレビ事件簿【バラエティ編】

(左)吉本興業公式サイトより(右上)部族アースインスタグラム(@chikyu_buzoku)より(右下)ナチュラルエイト公式サイトより

 2017年のテレビバラエティで大きな“事件”といえば、『めちゃ×2イケてるッ!』と『とんねるずのみなさんのおかげでした』(ともにフジテレビ系)の終了発表だろう。「楽しくなければテレビじゃない」というフジテレビイズムを色濃く残していた両番組の終了は、1980年代以降、脈々と受け継がれてきた“フジテレビ的”なものが遂に終わってしまうのか、と時代の移り変わりを実感し、寂しくなってしまう。

 だが、前者は20余年、後者は『おかげです』時代を含めれば30年以上、フジの看板を支えてきた。「打ち切り」のようなネガティブな言葉では語りたくはない。終了までの約3カ月、どんな幕の閉じ方をしてくれるのか、全力で楽しみたい。

 一方で、同じくフジテレビの番組でネガティブに語るしかない番組終了もある。たとえば『人生のパイセンTV』や『久保みねヒャダ こじらせナイト』だ。「フジテレビらしさ」の一つの方向性として、「JOCX-TV2」枠以降の深夜番組があった。演者も作り手も若手を積極的に起用し、チャレンジングな企画を通して育成したり、テレビ的ではないマニア寄りのサブカルチャーやカウンターカルチャーを取り入れた番組を作ってきた。そうした系譜にある番組を決して視聴率が低いわけでもないのに終わらせてしまったのは、とても残念だった。

 そんなフジテレビの、迷走なのか転換なのか……が目立った2017年のテレビバラエティを振り返ってみたい。

■「クセがすごい!」が受け入れられた千鳥

 2017年は、千鳥の年といえるのではないだろうか。

 12年頃、東京進出を果たした千鳥は、その“クセのすごさ”が足かせとなって、なかなか本領を発揮することができなかった。14年には『アメトーーク!』(テレビ朝日系)でも「帰ろか…千鳥」という企画が放送されたほどだ。

 しかし、16年頃から状況が変わっていく。在京キー局で初の千鳥メインのレギュラー番組『NEO決戦バラエティ キングちゃん』(テレビ東京系)が作られ、『アメトーーク!』でもノブの「クセがすごい!」が番組の流行語大賞に輝き、『THE MANZAI』(フジテレビ系)でも、「たけし賞」に選ばれた。

 その勢いのまま、17年には期間限定だった『キングちゃん』が異例の復活を果たしたり、『イッテンモノ』(テレビ朝日系)をはじめ、多くの千鳥なしでは考えられない番組が作られた。内村光良をはじめとする共演者は、いつの間にか千鳥独特のクセがすごい口調を真似するようになり、視聴者にもそのクセが感染していった。

 一方、17年のお茶の間の注目を浴びたのは、1月1日にテレビほぼ初出演で瞬く間にブレークしたブルゾンちえみだろう。自ら「私のネタは面白いんじゃない。気持ちいいの」と公言。お笑い芸人の規格から最初から飛び出しており、早くも『24時間テレビ』(日本テレビ系)のマラソンランナーに選ばれたり、メインキャストとして堂々とドラマにも出演した。

 規格外といえば、ANZEN漫才のみやぞんや、にゃんこスターもそうだ。前者は圧倒的なポジティブさと底なしの人の良さ、そして驚異的な身体能力で、有吉をして「天才という病気」と言わしめた。後者は、破壊的ネタもさることながら、特にアンゴラ村長はいわゆる「芸人らしさ」からは無縁。ベンチャー企業の社員で、相方との恋人関係を公言し、別れたら解散とあっけらかんと宣言。「顔とか生まれとかを蔑む笑いは古い」と言い放ち、女芸人が注目を浴びた17年に新しい女芸人像を提示した。

■ナスDが象徴する「ウソのないドキュメンタリー」

 2017年の“顔”といえば、「ナスD」の黒紫色の顔だ。

『陸海空 地球征服するなんて』(テレビ朝日系)に番組スタッフとして登場したナスDこと友寄ディレクターは、南米の奥地に潜入し、現地の部族が勧める食べ物を片っ端から食い、それどころか、現地の人がやめておけと言うものまで食ってしまう。そんな圧倒的キャラクターで、同行したU字工事の存在も食ってしまった。遂には部族の「美白にいい」という話を真に受け、刺青の染料にもなるウィトを体中に塗りたくった結果、肌の色がナス色になってしまったのだ。

 しかし、この番組が視聴者を惹き付けたのは、ナスDの強烈なキャラクターのせいだけではない。部族の中には、観光客に原始の生活を見せ、お金を稼ぐ“観光部族”がいる。普段は服を着て生活しているが、観光客が来ると、服を脱ぎ、踊りを踊る。通常の番組であれば、その部分だけを放送するのだろうが、この番組は違った。服を着て帰る姿もカメラに収め、そのまま交渉し、普段の生活まで撮りに行く。その“ウソ”のなさが支持されたのだ。

 いま、視聴者は“テレビ的なウソ”に対するアレルギーが強い。そうした反動からか、『陸海空』をはじめとするリアルなドキュメント系バラエティが人気を博した。『池の水ぜんぶ抜く』(テレビ東京系)もそうだろう。その名のとおり、池の水を抜くという一点勝負。いかにもテレビ東京らしい、テレ東でしか通らない企画だ。

 同様にテレ東でなければ実現しなかったであろう『ハイパーハードボイルドグルメポート』も衝撃的だった。「ヤバい世界のヤバい奴らのヤバい飯」というサブタイトルが示すように、リベリアの墓地に住む元少年兵や、中国マフィア、対立するギャングの両メンバーといった危険な場所に潜入し、その食事をレポートするというもの。「食べる」ことが「生きる」ことなんだということを実感する、ヒリヒリしたグルメ番組だった。

 この番組ではナレーションが一切なかった。NHKのドキュメント番組『ノーナレ』などでも同様の手法を使っていたが、こうしたテレビ的にわかりやすくするという演出を排したことで、生々しく伝わってきた。つまり、わかりやすさよりも伝わりやすさが優先されたのだ。それが“テレビ的なウソ”を嫌う今の時代に合致していた。

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