最大の価値が出るのは「これからの未来」──高須院長が3,000万円で落札した『昭和天皇独白録』って!?
#歴史 #高須克弥
ニューヨークでオークションにかけられた『昭和天皇独白録』の原本を、美容外科「高須クリニック」の高須克弥院長が約3,000万円で落札し話題になっている。
高須院長は「国の宝であり、国外へ持ち出すべきものではない」「歴史研究の意味でも原本は日本にあるのが一番」と、落札した原本を皇室へ提供(いったん宮内庁へ)する意向を示している。
そんな話題の『昭和天皇独白録』とは、どんなものか?
昭和天皇の事績については、現在、宮内庁が編纂した『昭和天皇実録』(東京書籍)が刊行されている。名前は似ているが『昭和天皇独白録』は、初めて聞いたという人も多いのではないだろうか。
同書は、1946年に御用掛として昭和天皇の通訳を担当していた寺崎英成氏が作成した談話録である。GHQによる占領を受けて、昭和天皇が戦争期の記録を作る意向を示し、作成されたものであることは、当時侍従であった木下道雄氏の『側近日誌』(文藝春秋)にも記されている。
今回『昭和天皇独白録』という名前で大きく注目されているが、これまで明らかになっている側近の記録に示されたものと比べると、内容に新発見はない。その内容はすでに1990年に明らかになって出版され、現在は単行本・文庫版などで読むことができるからだ。
つまり、今回、原本が落札されたことで「知られていなかった昭和史の真実」が出てくることはないだろう。
それでも、この史料が重要なのは、それが日本にあることである。
すでに活字になっているとはいえ、本格的に研究をするのであれば原本を読まなければならないのが歴史学の基本。そこでは、刊行されているものとの異同、あるいは、本文と無関係の走り書きのようなものに価値があったりするからだ。今後、昭和史は歴史学の分野でさまざまな研究対象となっていくだろう。そうした時に肝心の史料が海外のどこかの大学の所蔵や、あるいはコレクターが所蔵していて、誰も触れることができない……などということは、起こりがち。
そうした歴史研究の原原点といえる貴重な史料を、国内に取り戻した価値は大きい。
近年、日本では大衆文化に関わる史料なども、どんどんと海外へ流出する現象が見られている。ぜひ、高須院長の財産で、そうした流出を防いでもらいたいものだ。
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