「別れさせ屋」「スクープ記者」を完全再現!『99%ノンフィクション』で、逆に浮かび上がった“狩る側のリアル”
#テレビ朝日 #ドキュメンタリー
他にも、元彼がストーカー化し、いわゆる「リベンジポルノ」で脅してきて復縁を迫って来るという厄介な案件では、その元彼に女性(橋本)がさりげなく接触、本気で好きにさせてから、その後「橋本が嫉妬し、怒ったフリをして」依頼主の写真などを消去させるという手口が紹介される。『インファナル・アフェア』(2002)も真っ青な潜入捜査だ。
単に「警察に行けば?」との意見もあるかもしれないが、見られたくない写真を証拠として警察に提出したくなかったり、警察が動くことで元彼にヤケになって写真をばら撒かれたりすることがないようにしたいので、別れさせ業に依頼してくるケースが少なくないという。その手口も生々しい。
・自転車のチェーンが外れたフリをしてうずくまり「たまたま」通りかかった「元彼」に助けを求め接触
・背後から近づいてくる「元彼」にタイミングよく振り返り声をかけられるよう、仲間の工作員が車からハザードで合図を出す
・その時はあえて連絡先を聞かず、後日偶然を装い仕事帰りに「たまたま」再会し、「運命」を意識させる
・写真を消去してしばらく後、また別の女性工作員が「元彼」に近づき、親密になり橋本とは別れる、こうやって依頼主の存在をどんどん過去に追いやってから、完全に別れる
・依頼料金は1件につき数十万から
そして、もう一組の顔出しできない人物の仕事とは……。
■現役の芸能スクープ記者
こちらは先ほどの別れさせ業に比べると想像しやすく、ある意味「身近」な職種なのかもしれない。しかし、記事になる前の細かい様子は、さほど知られていないだろう。
「今日はね、クラブへ行こうかと思って、うん、実は某有名俳優が女遊びしてるってウワサがあって、今からその現場を確かめてみようかなって」と、記者歴11年の現役記者・下山明雄(仮名・35)に扮して語るのは役者・福士誠治。
信頼できる協力者(女性)とクラブに行き、VIPルーム付近で取り巻きにナンパされるように協力者に指示、見事に協力者はナンパされ、ルーム内に潜入。ターゲットの俳優の女遊びの有無を確認する。
先ほどと同じく、これをこっそり密着取材してる風に再現化。そこにリアルな情報を散りばめる。
・メイクやスタイリスト系の人はネタ情報の宝庫。競合タレントを失墜させるため、他社マネジャーからもネタが入る
・通話のふりしてスマホで撮影、車のワイヤレス・キーに見立てた隠しカメラで撮影などの手口紹介
・各編集部によって触れられないネタがあるので、他の編集部に売ることも
・ヘルメットと作業服を車内に置くことで、張り込み中に警戒されにくくなる
・撮られたタレントの事務所との駆け引きで、ちゃんとしたメイクやスポンサーに配慮した持ち物で撮り直しすることもある(スマホやドリンクなどのCMに出演している場合)
・大きいスクープで1本15万から20万の報酬(経費やカメラマンへのギャラはそこから捻出)
別の案件では、男とホテルで密会しているある女優への突撃取材中、わざと仲間割れのごとくカメラマンと揉め出し、撮影をやめるよう指示、さも自分は味方のような顔して接することで相手の態度を軟化させ、自分にだけ真相を語らせる手法も再現されていた。
この手口は、取り調べなどでもよく用いられる懐柔術だが、編集部によっては遠くから刺激しないように撮影するなど、それぞれ方針が異なるという。
■他人の人生を動かせるという力
別れさせ業の際にも言った通り、要所要所で、顔にモザイクのかかった「プロフェッショナル」本人の取材映像が、わずかながら盛り込まれており、その本人テイストを垣間見せつつ、役者演じる再現を見せる。
両者を見比べても、髪をさわる癖だったり、しゃべり方だったり、外見的な部分を役者が意識的に演じていることがわかるのだが、今回もっとも印象的だったのは、どちらの本人映像からも、その「業績」を語っている快感のようなものが垣間見られたこと、そしてその点だけは演技のプロである役者の芝居が追いついていなかったことだ。
これはもちろん想像だが、どちらの「本人」も「人の人生を手玉に取れる」「自分次第で他人の生活に大きな影響を与えられる」という性質が強い行為を生業としているため、お金以上の喜びをもって働いていると思われる。
仕事柄、おおっぴらに「語る」ことが許されない立場だけに、禁断の「語り」を許可され、しかもその「業績」を面白がり、ありがたがってくれる状況下で、その快感に酔う姿がより多く映し出されてしまったのではないか。
記者の方(本人)にいたっては「スクープを撮ることはセックスよりも気持ちいいと思っている」と明言していたほどだ。
しかも、他人の生活を手玉に取れるほどの「力」を持つ仕事をしていながらも、自分自身にスポットが当たることには慣れていないため、普段の職務中には出さないであろう「自分」へのガードが下がる。
MCやゲストの芸能人(バカリズムや伊集院光など)も、多分に「影響力」や「快感」を持ち合わせる仕事である。
だが、彼らは同時に「見え方」に対する警戒心や、チヤホヤされながらも、むしろ「狩られる側」であるという認識も強く持ち合わせているはずだ。
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