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乃木坂46初の東京ドームライブの見切れ席グラフィティー

齢(よわい)67歳の週刊誌記者が突然アイドルにハマってしまった……余生を乃木坂46に捧げる!そんな覚悟で送る、オジサンのヲタ活ノススメ。

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「取れました!取れましたよ!」

 受話器から飛び出してきたK君のテンションの高い声。指定席の抽選3回全落ち後の最後のチャンスが指定席より条件が悪いとされる「見切れ席」と「音席」の申し込み。前回の記事で取り上げたステージサイドの音席とステージ真裏の音席。この席をめぐって、朝9時の申し込み開始からパソコンやスマホで申し込むのだが、1時間たってもサイトにつながらない状態だった。しかし、K君はスマホで見事にアクセスしチケットをゲットしたのだ。「見切れ席上等!」私は嬉しくて叫んでしまった。3期生の参加もあって、初めて全員で46人となったメンバーといっしょに「メンバーとファンが夢見た地」東京ドームに行ける。嬉しくてもう半泣き状態。

 当選日からライブまで怪我とかしないように赤信号で横断せず、不要不急の外出をせず、いつもにこにこと笑い指折り数えてその日を待った。そしてライブ初日の11月7日。後楽園の敷地に入るとメンバー全員の写真の垂れ幕が下がっており、ファンたちはひたすらそれを写メっている(もちろん私も同じ)。物販はと見ると長蛇の列で、この列に並べば最後、公演が始まってしまうので後ろ髪を引かれつつ断念。うろうろしていると別の場所に「グッズ売り場」という表示があり若い男女が並んでいる。なぜかここがすいていたので「ラッキー!」とばかり並んでいると、少しして担当者が出てくるや「刀剣乱舞のお客さま」と呼びかけるので倒れそうになった。ゲームが舞台になって刀剣ブームを起こしたあの作品だ。あわててその場から離れ、なんとかKさんと合流。2人が参加しているSNSのコミュニティの世話役が遠くから来ているのでご挨拶に行く。お礼を述べてから乃木坂46とライブの話で盛り上がる。初めて会う人だがメールのやりとりをしていたので、昔からの知り合いのように親密感がある。ライブの楽しみのひとつには、普段ネット上でしか交流のない仲間たちと実際に会うというイベントも含まれている。

 そして入場。ゲットしてもらった見切れ席はレフト側で、スコアボードの下にあるメインステージに向かって左側。ほぼステージと平行の位置なので正面は見えないが、センターステージとエンドステージ(バックネット側)はバッチリ俯瞰できる。今回はこの見切れからの風景を報告だ。どきどきしながら待ったライブ。メンバーによる注意事項のMCがスタートしてすでに場内が興奮し始めたとき、いきなりエンドステージに登って走りだした制服の集団、いつもと違う変わった登場だなと思いながら見ていると……。

 背丈も体型もバラバラ。しかも金髪の娘もいる。それどころか46人なんてものじゃない人影がどんどん増えていく。あっけにとられているとみんながメインステージに並んでメンバーといっしょになって踊り始める。「乃木坂46 真夏の全国ツアー2017 FINAL!東京ドーム公演」での1曲目は「制服のマネキン」でスタート。あとで聞いたら460人の女子高生だったとか。面白い企画ではある。

 ゲストたちがはけるとメンバーはメインステージから花道を駆けて、センターステージやエンドステージで初期の表題曲を中心に歌って踊る。ファンの歓喜のボルテージはすでに最高潮。おなじみ「ハウス!」のコールもドームで叫ぶとまた格別だ。曲によってセンターが替わると5万人の観客はいっせいにサイリウムカラーを変える。ずっと端まで眺めるとやはりドームはでかい。思えば私は屋根のない頃ここでマドンナを、屋根ができてからマイケル・ジャクソンやポール・マッカートニーのライブを観た。そんな伝説のアーティストたちが踏んだ舞台に今、乃木坂46がいる。マイケルにもポールにも負けない煌めきを携えている彼女たちのなんと誇らしいこと……。などと、ついつい感慨深くなってしまった。

さよならひめたん、さよならまりっか、ファンとの思い出は「不等号」

 グループがまだ今ほど有名でない頃、AKBとの交換留学生になって総選挙に参加した生駒里奈、知名度向上のためのティッシュ配りをして泣きそうになっていた彼女をメンバーが自発的に応援したこと、西野七瀬が初センターとなった「気づいたら片思い」のヒット祈願でマカオタワーのデッキから233mのバンジージャンプをしたこと、紅白の初出場が1年遅れたこと、まいまい、ななみんが卒業したこと、4月のアンダーライブでわずか12人ながら見事なパフォーマンスを見せてくれたことなど、ありとあらゆるエピソードが頭を駆けめぐり「脳内博覧会」になってしまった。そして今回、伊藤万理華と中元日芽香の最後の大きなライブが東京ドームだということは本当に切ない。

 いろんな思いを抱えていると、ライブ中盤でいきなりメンバーの名が一人ひとり呼ばれてエンドステージに登る。「このメンバー構成は?」と思っていると隣の席のK君が「アンダー経験者ですね」としみじみ。そうか、現在のアンダーメンバーとかつてのアンダーメンバーたち。まりっか(伊藤万理華)とひめたん(中元日芽香)がいる。そしてこのメンバーでの3曲目がひめたんセンターのアンダー曲「君は僕と会わない方がよかったのかな」。ひめたんは卒業しても妹のすず香のいるBABYMETALのライブにゲストで出ないかなとか無理なことばかり考えてしまう。ひめたんセンターの「不等号」の内容と同じく、2人と会えなくなるとファンの思いの熱量が強すぎ、まりっか、ひめたんとの思い出も不等号になってしまう。

 そんなことを考えているとライブはすでに後半。私の席からはステージの後ろ半分はよく見える。いつの間にかピアノが置かれていた。いくちゃん(生田絵梨花)が弾き始めたのは「君の名は希望」だ。それまでヲタコールや歓声で膨らみ切っていたドームが、水を打ったように静まりかえった。いくちゃんの「背中しか見えないが孤独な少年が心を癒される」というテーマが本当に心に沁みた。私が乃木坂46にハマったのもこの曲だった。私だけでなくそういう人は多いようだ。乃木坂にハマり、SNSで発信されるメンバーに背中を押されてドキドキしながらライブに行ったのもこの曲があったからだ。そしてしょっちゅう連絡を取り合い、一緒にライブに行く年下のすばらしい仲間たちもできた。今回ドームに来れなかった仲間のことを思うと胸が張り裂けそうになる。みんなのおかげで私は今年の乃木坂46の大きなライブに全部参加できた。この日ももし仲間が参加していたら、ライブ終わりに宴会をして喜びと感動を分かち合えたのに……。

フックと共にメンバーが天空へ

 そして「いつかできるから今日できる」でライブはいったん終了。見切れ席だからこそ見れたのがメンバーの天空への移動!一応ライブ終了というときにステージ裏の横の垂直のような階段をメンバーが登って行く。そして係員がメンバーのステージ衣装に高所作業に使うようなフックを付ける。順番を待つメンバーのうち何人かがステージ裏の「音席」のファンに手を振る。

 そうやって登った場所がドームで一番高い観客と同じ高さだった。メンバーも初めて見る高みからの景色に感激だろう。バックで流れたのが名曲「きっかけ」のインスツルメンタル版、この曲もやっぱり沁みる曲だ。翌日のライブではまりっかとひめたんが2人でこの曲を歌ったと知って、またしみじみ見たかったなあと思った。

 天空からドーム内の景色を眺めたあと、メンバーはステージ裏に降下してはけて行ったのだが、ここでも音席の一番前の通路をメンバーが通るという粋なはからいが。まっ黒なステージ裏で耐えたファンも大喜びだ。 

 そしてしばらく待っていよいよアンコール。最初の曲が「おいシャン」(おいでシャンプー)。乃木坂46の2曲目の表題曲だが、この曲ではフロントメンバーだった中田花奈しか推さないという意味の「ナカダカナシカ、ナカダカナシカ♪」というコールが久しぶりに聞けた。以前記事で紹介した75歳の乃木ヲタのIさんも、2日目に参加して中田コールが聞けてとても嬉しかったと言っていた。

 ライブ中、見切れ席から見えるステージ後列に立つメンバーの背中はまっすぐだった。そのまっすぐな背中があったから、約束の地まで来れたんだなあと思ってしまった。いつものライブでメンバーが乗るゴンドラも、東京ドーム仕様で王冠をあしらったものになったりとゴージャスだった。シンデレラたちは王宮へ上がったわけなのか。ありがとうメンバー!ありがとう仲間たち!心の中でそう叫んだ日は幸せと切なさの中で過ぎて行った。

土肥 真也
1948年生まれ。長年週刊誌記者として実用やエンタメなどの記事を取材・執筆。今も現役でウェブニュースなどの仕事をしている。ハードロック好きでツェッペリンやディープパープルの初来日ライブに行ったことが記憶の中の宝物。しかし、たまたま聴いた1曲で乃木坂46が降臨してしまう。以来座学で数年間乃木坂46を学ぶも、我慢できなくなり昨年初めてライブに参加して初めてサイリウムを振りまくった。その感動を週刊誌に寄稿、以来年下のファン仲間ができて楽しく一緒にライブに通っている。夢は家族席、女性席に次ぐシルバー席を用意してもらい死ぬまで乃木坂46のライブに通い続けること。

最終更新:2017/12/23 20:00
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