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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.459

片想いをこじらせた“痛い女”松岡茉優に惚れる! 綿矢りさ原作を換骨奪胎した『勝手にふるえてろ』

松岡茉優の初主演映画『勝手にふるえてろ』。主人公・ヨシカの頭の中は妄想だらけ、口を開けば毒舌が飛び出す。

 松岡茉優はけっこう芸歴が長い。ジュニア時代には園子温監督のブレイク作『愛のむきだし』(09)にヒロイン・満島ひかりを慕う親戚の女の子役でちょい出演し、人気番組『おはスタ』(テレビ東京系)のおはガールも務めていた。『おはスタ』卒業後は本格的に女優の道を歩み出し、吉田大八監督の『桐島、部活やめるってよ』(12)で東出昌大の彼女、朝ドラ『あまちゃん』(NHK総合)でアイドルグループ「GMT」のリーダーを演じるも、作品世界にあまりにも同化しすぎて、松岡の存在は印象に残らないという不憫な状況に陥っていた。役へのなりきりぶりが災いした格好だった。

 ところが、2016年にオンエアされた深夜ドラマ『その「おこだわり」、私にもくれよ!』(テレビ東京系)や大河ドラマ『真田丸』(NHK総合)など素の松岡を“当て書き”した作品に出演し、いっきに輝きを増すようになった。そんな松岡にとって、待望の映画初主演作となるのが綿矢りさ原作『勝手にふるえてろ』だ。

 松岡演じる主人公・ヨシカはかなり重度なこじらせ女子である。OLとして地味に経理の仕事をこなしているが、頭の中は煩悩だらけ。中学時代にずっと片想いしていた“憧れの王子さま”イチ(北村匠海)のことが忘れられず、イチとのほんのちょっとした会話やチラッと目線が合ったときの記憶を反芻してはニヤニヤしている。ちなみにヨシカから告白したり、卒業後に連絡しようと働き掛けたことはいっさいなし。記憶の中のイチを召喚しては、甘酸っぱい想いに駆られる毎日だった。

ヨシカの“憧れの王子さま”イチ(北村匠海)。久しぶりに再会するも、ヨシカは想いを伝えられない。

 そんな“痛い女”ヨシカでも、「俺と付き合ってください」とアタックしてくる男がいる。同期入社した営業部のニ(渡辺大知)だった。王子さま系には程遠いニは、ヨシカのタイプではまったくないものの、人生で初めてコクられて悪い気はしない。いつも挨拶を交わしている近所の釣りおじさん(古舘寛治)やアパートの隣人(片桐はいり)たちに鼻高々に自慢するヨシカ。かなり面倒くさい女である。

 正直、ヨシカにとってストライクゾーンではない“うざい系”のニだが、ヨシカはヨシカで週末に一緒に出掛ける相手もいない。強引なニに渋々つきあううちに、次第に感化されるようになっていく。ニはヨシカとお近づきになりたくて、営業部の同期に頼んで経理部女子との飲み会をセッティングしてもらったと打ち明ける。いつもはニのことを見下している上から目線のヨシカだが、ちゃっかりニの戦術をパクって中学時代の同窓会を企画することに。ヨシカはクラスではまるで目立たない存在だったので、米国留学中の同級生の名前を騙った偽SNSで動員を謀る。もちろん同窓会の目的はただひとつ、卒業以来まったく逢っていないイチと再会するためだ。男性経験ゼロなヨシカだが、理想の彼・イチと現実世界の彼・ニとの二股交際に走る貪欲ガールへと変貌していく。

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