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日刊サイゾー トップ > エンタメ > スポーツ  > 格闘家・渋谷莉孔、涙のインタビュー

“失明危機”から舞い戻った格闘家・渋谷莉孔、涙のロングインタビュー!

今年6月、目の手術のため日本へ一時帰国したときの表情

――最大の勝因はズバリ?

渋谷 前の試合(今年8月の復帰第1戦)は相手に対するリスペクトが足りなかった。そこっスよね。相手をナメていると、相手のいいところを見ないじゃないですか。だから相手を怖がらずに行ったら返り討ちに遭っちゃったけど、今回は相手をリスペクトしていたから、相手の強さをしっかり認められたんですよ。相手は打撃がめちゃくちゃ強い。だから死ぬ気でやらないと殺される。そういう思いで練習できたからこそ勝てた。リスペクトなしでは強くなれないってことだと思います。

――2年前からハワイに移住し、マックス・ホロウェイらUFCのトップファイターが所属する「グレイシー・テクニクス・ホノルル」でトレーニングを積み重ねてきた渋谷選手。向こうの練習環境はいかがでしょう?

渋谷 キツすぎて頭がおかしくなりそうです。特に今回の試合に向けた数カ月間は、毎日パニックとストレスの中にいるような感じ。スマホや鏡を見る余裕もない。ハワイでは語学学校にも通っているんですが、そこで他の生徒から話しかけられても誰が誰だかわからない。世界が霧がかっているような感じで、みんなが俺のことを騙しているんじゃないかと疑いだしたり。会う人会う人に「Are you ok?」と心配されるんですが、自分では何がおかしいのかもわからない状態でした。オーバーワークが原因なのはわかっていたんですが、自分の勘を信じて猛練習を続けました。

――ここ数カ月の練習内容は?

渋谷 限りなく実戦に近いスパーリングをひたすら繰り返しつつ、前回の試合でダメだった部分、具体的には、下半身の強化に努めました。昔の俺はダメなところを見ようとしなかったんですよ。あとパニック障害だということも認めようとしなかった。

――パニック障害だったんですか? それは初耳です。

渋谷 俺、昔から病的に焦りやすいんです。なんでも完璧に準備するタイプだから、時間を急かれたり不測の事態が起きたりすると、すぐパニくっちゃうんです。「入場が30分早まりそうです」とか言われると心臓が止まりそうになる。「そんなの無理無理無理! 俺、試合なんてできない!」と叫んで、セコンドに抱きついたこともありました。今回のデェダムロン戦も直前まで大変でしたよ。

――何があったんですか?

渋谷 何回かに分けて計量と尿検査があったんですが、言葉のハードルもあり、今日は56.7キロとか、56.9キロまでOKとか、56.9キロはダメとか情報が錯綜して、どれが本当だかわからなくて。尿比重の正しい比率もわからなくて、1回オーバーしちゃったんですよ。そんで「1時間後までに落とせ」と言われてすごいパニックになったけど、そこはなんとかクリアできた。で、翌日の最終計量と尿検査はパニくらないよう早めに行ったんですけど、着いたらみんなとっくに終わっていたから大パニックになりました。知らないうちに開始時刻が1時間早まったらしいんですよ。

――それは焦りますね。

渋谷 「30分以内に尿を出してくれ。出なかったら失格だ」と急かされたんですけど、なかなか出なくて、頭真っ白になって。残り7分ってところでどうにかこうにか絞り出して、ギリ間に合って試合には出られるようになったんだけど、そのときの俺の取り乱しようったらなかった。すでに試合前日だったけど、チームのみんなで急きょ対策会議を開き、「パニック障害だということを認めよう。そしてその原因を認めよう」ということになり、それが何なのかはここでは言えませんけど、認めることで克服したんですよ。おかげで翌日の試合では一切緊張しなかった。腹が据わって、本来の力を出せたんです。

――災い転じて福となす、ですね。

渋谷 はい。土壇場で辛いことが相次いだおかげで、覚醒できたんですよ。いい経験でした。辛い経験って自分からしたいと思ってもできないし、降りかかってきてくれないと受け止められない。で、乗り越えた者だけがこうやって心が強くなれるというか、何に対してもビビらなくなる。今なら「爆弾処理をやってくれ」と頼まれてもできるような気がします(笑)。それぐらい俺は変わりました。そういや俺、ハワイで自己紹介するときはいつも、「俺のパーソナリティーは『Change』だ」って言っているんですよ。気が変わりやすいという意味もあるけど、悪いところはすぐに変えられるっていう意味でもあるんですよね。

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