ついに神木隆之介が「童貞」を認めた『刑事ゆがみ』小林隆が“老人”を演じるという恐怖
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■加害者と被害者は、巧みに入れ替わる
一方、盗みに入られたのは、このマンションの住人・沼田(小林隆)。銀行を定年退職した沼田は、身寄りこそないものの、高級マンションに暮らす、お金持ちのおじいちゃん。今回の件では180万円のお金も戻ったことから被害届を出さないと言います。見るからに善人ですが(何しろ小林隆だし)、金庫に2,000万円もの現金を入れているなど怪しい点も。
ちなみにこの2,000万円は弓神が金庫を覗き込んで発覚したものですが、当然、ピッキングか何かして勝手に開けたのでしょう。もう弓神がそういうことを勝手にやってるという段取りすら映さない。視聴者を信用した、潔い省略です。
ところで、アバンによれば今回は「独居老人が詐欺に遭う話」でした。泥棒に遭う話じゃなかったよなーと思っているところで、「近所で老人狙いの振り込め詐欺が頻発しています」という情報が放り込まれ、この猿渡の死と振り込め詐欺事件が複雑に絡まり合い、加害者と被害者を巧みに入れ替えながら事件の解決に至ります。例によって、面白いのでFODとかTVerでどうぞ。
■「犯人の掘り下げ」には、今回も力が入っています
このドラマの最大の魅力は、なんといっても犯人が犯行に至った背景や犯行動機の掘り下げにあります。
今回も、子どものために真面目に生きようとした元窃盗犯、そして、仕事のために真面目に生きてきただけだった元銀行員の悲しみが切々と、大真面目に語られました。
ホントに、真面目に脚本作ってるなーと毎度思うんです。以前にもこのレビューで書きましたが、事件の謎と解決は今回もゆるい部分はあります。でも、「これを言うんだ」「今だから、この話なんだ」という強い意思、創作意識はびんびんに伝わってくる。『刑事ゆがみ』のスタッフは、実に気持ちのいい仕事をしていると思います。
■羽生くんの成長、もしくは“弓神化”について
今回、もっとも印象的だったのは、羽生くんが取り調べで犯人に自白を迫る場面でした。
羽生くんの取り調べシーンは、特にドラマ前半で繰り返し登場しています。先入観にとらわれ、目の前の人間を犯人と決め付け、まるで刑事ドラマのモノマネみたいに机をバンバン叩きながら言質を取ろうとし、ヒマがあれば「自白 誘引方法 心理戦」でググったりもしていました。幼稚であり、その幼稚さがチャームポイントでもあったのが羽生くんという刑事だったのです。
今回、キャバクラで警察バッジを見せびらかすなどの幼稚さを残しながらも、捜査や取り調べでは弓神の影響を受けて明らかに成長している様を見せつけました。県警の指示に背いて弓神の違法捜査に協力することも、もう厭わなくなっています。回を重ねるにつれて“バディ”の関係性にも変化が表れている。残り2話、正直、楽しみでしょうがないといったところです。
■余談
ところで、今回の“仕事人間”沼田の告白には、まったく共感できませんでした。定年退職した独居老人の苦悩は、よく練られたものだったとは思うんですが、やっぱり頭で考えたお話だな、という印象だったんです。第2話の喪女や前回のインスタ映え女のような、作家自身の当事者性が反映されている(ように見える)物語に比べると、迫ってくるものが少し弱かったかなと。
そう思ったんですが、この文章を書きながら、もしかしたらあんまり素直に受け取りたくなかったのかもしれないと思い直したんです。何しろ私自身も独居老人まっしぐらですし、まだまだ“頼りない中年”くらいの役が似合うと思っていた小林隆が「お爺ちゃん」に配役されている。その分だけ、私にも年月が流れている。そういう現実、迫りくる老後が、直視できなかったのかもしれません。えーと、何この余談。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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