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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.456

キラキラした青春(性春)に復讐してやりたい!! 捻れ曲がったピュアすぎる官能映画『青春夜話』

 53歳にして、自身の脳内エロイメージを赤裸々に74分間の映像世界にしてみせた切通監督。初めての映画撮影に挑んだ切通監督をサポートしたのは製作総指揮の友松直之氏。『AI高感度センサー搭載 メイドロイド』のタイトルでDVD化された『老人とラブドール 私が初潮になった時…』(09)などピンク映画の監督として人気が高い。ピンク映画を専門に上映している上野オークラ劇場あたりで『青春夜話』を上映すれば、それこそアメージングに感じるシニア世代も多いのではないだろうか。本作を語る上で、撮影監督をつとめた黒木歩嬢の存在もはずせない。AV監督やミュージシャンとしても活躍中の才媛で、本作の喬と深琴のフェティッシュな官能場面を実にエロティックかつポップなものに撮り上げてみせている。

 

セーラー服やスクール水着に着替えさせられた深琴。「俺は見てるだけでいいんだ」という喬に不満を感じるようになる。

 普段は自分の意見を他人にはっきり言うことができない深琴だが、高校時代をリプレイしているうちに喬がずっと傍観者なままなことであることに不満を感じるようになる。深琴にばかり着替えさせ、喬はスーツ姿のままだ。「俺は見てるだけでいいんだ」「エッチをさせてくれる女の子は、男にとっては天使」と喬は言うが、それでは深琴の体を張ったトラウマ浄化体験は喬の性的欲求を満たすだけのマスネタ扱いではないか。柔和な性格の喬だが、深琴のことを生身の女としては見ていないことになる。

「タダマン野郎が一丁前に女の価値を評論してんじゃねぇ。この無銭飲食野郎!」

 ただでセックス、しかもコスプレセックスできたことを喜んでいるおめでたい喬に対して、深琴は自分と同じリングに上がってこいと挑発する。高校時代のイケてなかった暗い記憶、心の中にずっと溜め込んできたドス黒い欲望、性に対する無理解と異性への怒り……。様々な感情をぶつけ合いながら、喬と深琴はこの夜何度目かのセックスを交わす。いくつもの夢や感情が重なり合い、2人にとって忘れられない一夜となる。

 本作のヒロインである深琴が、「浦島太郎」の絵本を持った白髪のホームレスと出逢った際の台詞が印象的だ。「玉手箱って開けちゃったら、それまでですよね」。また、喬を相手に「玉手箱、開けないでくれって無理だよね。その前に年をとったらバカみたいだし」とも呟く深琴。評論家であり、映画監督として処女作を撮り上げた切通氏にとっては評論集を編むことも、映画を撮ることも、竜宮城の楽しい思い出がぎっしり詰まった玉手箱をこしらえるような行為であるらしい。この玉手箱を開けてしまえば懐かしい思い出と引き換えに、自分にとって少年時代や青春時代はもはや遠い過去になったことを痛感させられる。それでも、この玉手箱は開けずにはいられない。
(文=長野辰次)

『青春夜話 Amazing Place』

監督・脚本/切通理作 
製作総指揮/友松直之 撮影監督/黒木歩 撮影・照明/田宮健彦 美術/貝原クリス亮 録音・MA/石川二郎 編集/長田直樹、西村絵美、切通理作 音楽/KARAふる
出演/深琴、須森隆文、飯島大介、安部智凛、松井理子、友松直之、川瀬陽太、中沢健、櫻井拓也、石川雄也、黒木歩、衣緒菜、晴野未子、和田光沙、佐野和宏
配給/シネ☆マみれ 12月2日(土)より新宿K’s cinemaにてレイトショー公開
※ 初日舞台挨拶および期間中トークショーあり
http://seishunyawa.com

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最終更新:2017/12/04 11:35
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