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日刊サイゾー トップ  > “男の娘”の輝き「おちんコス感謝祭」

“男の娘”たちの輝き──性欲を超えた嗜好の快楽を見た「おちんコス感謝祭」

 これは、少々意外な回答。てっきり、男の娘というものは衣服を身につけた時や化粧をした時に、心の中でスイッチをオンにするものだと思っていた。でも、その正反対ということは、男の娘であることが基本のライン。なるほど、その屹立が、このコの可愛さを生み出しているのか。でも、なぜそこまで確固たるものができたのだろう。話していると、そのセクシーな唇から、こんな言葉がポツリと。

「出演してないんだけど、撮影はしてもらったんです。プライベートAVみたいな感じに」

 リリースはしないけど撮影された幻の「おちんコス」タイトル。ただ一度、彼女も参加したイベントでだけ上映する機会があった。今のところ、生涯一度だけの、自分がセックスしている映像の披露。それは文字通り、顔から火が出るような恥ずかしい時間だった。でも、観客からは大好評だった。さまざまな映像を持ち寄って投票するという、そのイベント。彼女のタイトルは2位となった。

「帰りの電車の中で高揚感が止まりませんでした。何者にもなれなかった自分が、何かになれた気がして……」

 偶然の決意が、彼女に確固たる芯をつくったのか。でも、なぜ撮影してもらおうと思ったんです? 返ってきたのは、これまた意外な言葉。

「30歳を前に……20代最後の思い出にと思って」

 そんな言葉を聞いたときに、相手が返すことができるのは「すごく若く見えますね」という一言くらい。でも、それはお世辞やおべんちゃらの類いではない。実際に彼女の肌は、瑞々しく輝いていた。決してセクシーな衣装を身につけているわけではない。でも、何かが輝いている彼女の存在は、語っていた。

<男の娘というものは、誰かが技術を用いてなれるものじゃない。本人の意志によって生まれるものなのだ。>

 いわば「なりたいものになれる」を実現したのが男の娘たち。では、そんな彼女らに魅了されている男の子は、何を求めているか。高揚している男の娘たちに比べて、彼らはどこか控えめな印象。誰彼となく話しかけたりすることもなく、その場にいることだけで満足しているようにも見える。

 会場にいた、以前にも出会ったことのある、出演タイトルが人気の男の娘、ちびとり嬢や朝日みくる嬢。エッチなお店にも出勤している彼女らに、出演作を見て来るお客さんが多いのか尋ねてみる。答えは2人とも同じ。

「そういう人もいるけど。そうじゃない人が多いかな」

 余計に興味を惹かれる言葉。ならば直に聞いてみないといけない。会場に、勝新太郎のTシャツが目立つ、とても満足げな顔をしていた男性に声をかけてみた。彼の男の娘の目覚めは「いがらしゆみこの息子さん」だという。

「まだまだ自分は研究中なんですけど。可愛ければ男でもいいんじゃないかと思っています」

 このイベントを知ったのも、Twitterで可愛い男の娘をフォローしていたら、タイムラインで告知が流れてきたから。直接的な性欲よりも、可愛いコを愛でたいという素朴な欲求の中に、男の娘という新たなジャンルが加わったということか。

 ほかにも幾人かと話をしてみたけれど、多くの男の子が求めているのは、個人的な関係性や性的な欲求よりも、可愛さ。だから、さまざまな魅力を放つ男の娘と、同じ場にいるだけでクラクラするほど楽しいというわけだ。

 でも、ずっとそうだろうか。彼らもふと、さらに先にある楽しい世界を見てみたいと思う機会に遭遇するだろう。でも、彼らのスタンスは変わらないだろう。男の娘とは、決してギラギラと欲望のまなざしを向ける存在ではない。多くの人にとって男の娘は「なりたい自分」を追求する存在。憧れであり尊敬の対象。そして、自身の世界を拡張させてくれる依り代。

 

 無数のまなざしは、男の娘をより魅力的に輝かせる。とめどもなく広がっていく世界。誰が、その魅力に抗うことができようか。
(取材・文=昼間たかし)

【出展情報】
コミックマーケット3日目 東Y47b
詳細はTwitter(@otocosfeti)にて
https://twitter.com/otocosfeti

最終更新:2018/12/12 15:55
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