良質なNHKジュブナイル『アシガール』を輝かせる女優・黒島結菜の存在感
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黒島は、15年にNHK広島放送局で制作された『一番電車が走った』では、原子爆弾投下に遭遇する少女を演じていた。
極限状態の中で、髪も服もボロボロに汚れていた彼女が最後に解放されて、行水をする姿は神々しいものがあった。
本作でも薄汚れた男の子のような姿と、ふとした瞬間に見せる女の子らしい華奢な振る舞いのギャップが黒島の魅力を倍増させており、単純なかわいらしさや綺麗さだけではない「生命力の強さ」そのものを演技で表現できることこそ、彼女の魅力だろう。
テレビドラマ好きの間で、黒島に注目が集まったのは14年。当時は『アオイホノオ』(テレビ東京系)や『ごめんね青春!』(TBS系)といったドラマに脇役として出演しており、その存在感に釘付けとなった。
彼女は沖縄出身で同郷の満島ひかりに憧れているというが、眉毛が太く昭和の匂いがする女優だと当時は言われていた。いい意味で洗練されていない野暮ったさが黒島にはあったのだが、あれから3年が経ち、20歳となった今も彼女は初々しい演技をしており、ダイヤの原石のような存在感を見せている。
16年には筒井康隆の伝説的なジュブナイル小説をドラマ化した『時をかける少女』(日本テレビ系)で主演を務めた。これも、華奢な身体が醸し出す少年のようなたたずまいが、原作の世界観に見事にハマっていた。
『時をかける少女』というと、80年代に大林宣彦が監督して原田知世が主演を務めた映画版が有名だが、今の黒島の存在感は、当時の角川映画で原田知世や薬師丸ひろ子が体現していたものと近いのかもしれない。
彼女の素朴な魅力は、NHKドラマと相性がいいのだろう。連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『マッサン』や『夏目漱石の妻』など多数の作品に出演している。
『アシガール』では、ついに主演を務め、すっかりNHKにはなくてはならない女優となった黒島だが、そろそろ彼女を主人公にした朝ドラがみたいものだ。
おそらく黒島なら、戦前や昭和を舞台にした作品なら何をやってもハマることは間違いないだろう。
(文=成馬零一)
●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。
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