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映画愛をむさぼる悪徳プロデューサーは実在する!? 地方ロケの内情を映画化した『エキストランド』

 

■宿泊費&飲食代を支払わない撮影クルーがいる!?

 

──地方ロケで起きやすいトラブルは何でしょうか?

田中 撮影に使ったロケ現場を撮影前の状態に戻さずに散らかしたまま次の現場へ移動してしまう、器物を破損してしまうといったケースはよく聞きます。謝れば済むものではないんですが、「映画なら何をやってもいい」という態度だと必ず問題を起こします。映画撮影は暴力的行為だということを認識していないとダメだなと思います。FCの方もベテランになると「この作品の撮影は深夜まで掛かりそうだな」と予測できる場合は、住宅街から離れた場所を紹介するなど、うまく対処しているようです。FCからいちばんよく聞くのは、やはり金銭トラブル。信じられないことに、ロケ先の宿泊費や飲食代を支払わないまま、ばっくれる撮影クルーがいるそうです。支払うにしても、支払うタイミングでトラブルになることもあるようです。撮影側の都合で、翌々月払いとか、遅いときは映画の公開まで払われないとか。ホテル側からしてみれば、その場で支払ってほしいでしょうから、そのへんのコミュニケーションがとれてないトラブルがあるみたいです。仮にスタッフ30人が一泊5,000円のホテルに泊まったとしたら、1週間で100万円越えてしまう。小さなホテルだと、支払いのタイミングはかなり重大な問題ですよね。

──ずばり、悪徳プロデューサーは実在する?

田中 映画で描かれた駒田というプロデューサーは各地で聞いてきたよくないエピソードの集合体なので、実際にはあんな人物はいないはずです。ただし、自分のキャリアづくりしか考えずに、トラブルばかり起こすあくどいプロデューサーは存在するかもしれません。ジャパン・フィルムコミッションでは年に一度集まって、トラブルにどう対処していくのかスキルアップ研修を開いているそうです。問題が起きていなければ、わざわざ研修をやる必要もないはずですよね。僕個人はプロデューサーの駒田って、『スター・ウォーズ』シリーズの悪役ダース・ベイダーみたいな存在だと思っているんです。最初は面白い映画をつくろうと頑張っていたけど、映画製作に行き詰まってダークサイドに堕ちてしまう。駒田プロデューサーは、ダースベイダーみたいな存在なんです。それもあって、爽やかなイメージのある吉沢悠さんに、この役をお願いしました。駒田は決して根っからの悪人ではないし、僕自身も含めて映画製作に関わっている人間はいつダークサイドに堕ちてしまうか分からない。だから、この作品は自分への戒めでもあると思っています。こんな悪徳プロデューサーは、駒田が最後のひとりであってほしいですね。
(取材・文=長野辰次)

『エキストランド』
監督/坂下雄一郎 プロデューサー/田中雄之
脚本/坂下雄一郎、田中雄之
出演/吉沢悠、戸次重幸、前野朋哉、金田哲、後藤ユウミ、嶺豪一、中村無何有、宇賀那健一、鷲尾英彰、長野こうへい、仁科貴、棚橋ナッツ、古川一博、芹澤興人
配給/コトプロダクション 11月11日(土)より渋谷ユーロスペース、上田映劇ほか全国順次公開
(c)Koto Production Inc.
http://extrand.jp

●田中雄之(たなか・たけし)
1982年東京都生まれ。慶應大学を卒業後、博報堂に入社。映画を中心にコンテンツ×企業のタイアッププロモーションを多数手掛ける。博報堂を退社後、2011年より東京芸術大学大学院映像研究科に進学し、落語を題材にしたオムニバス映画『らくごえいが』(13)を企画プロデュース。卒業後に「コトプロダクション」を設立。監督&プロデュースした短編映画『FIVE PERCENT MAN』は現在各地の映画祭に出品中。その他のプロデュース作に清水崇監督の『雨女』(16)、エグゼクティブプロデュース作としてサンダンス映画祭ショートフィルム部門大賞を受賞した『そうして私たちはプールに金魚を、』(16)などがある。宮崎大学地域資源創成学部の講師も務めている。

最終更新:2017/11/10 11:47
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