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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 伝説のホラー映画の撮影現場が地獄
オワリカラ・タカハシヒョウリの「サイケデリックな偏愛文化探訪記!」

追悼・トビー・フーパー! 伝説のホラー作品『悪魔のいけにえ』の撮影現場は、映画以上の地獄だった!!

『悪魔のいけにえ 公開40周年記念版 [Blu-ray]』(松竹)

 最高のホラー映画は何かと聞かれたら、ノータイムで『悪魔のいけにえ』と答える。

 そんな人間が、僕以外にも世界中のあらゆる町に溢れているだろう。

 人類の歴史に残るホラー映画の金字塔、『悪魔のいけにえ』。

 僕が十数年前にこの映画を初めて見た時、すでに『悪魔のいけにえ』は名作ホラーのレジェンド的な存在だったわけだが、「何十年も前の映画がそんな怖いわけないじゃ~ん、どうせ特殊メイクもショボいよ、当時のファンは思い入れあるかもしれないけど、ありがちなホラー映画だろ~」という、完全になめてかかった態度で視聴を開始した。

 結果的に、強烈な体験に心臓がバクバクし、一時停止を押したい! と本気で願った数少ない映画となった。

 この映画は、「怖い」を超えた何かだ。

 もはやホラーだとか、スプラッターだとか、そういうジャンルを超えて、フィルムから放射されてくるエネルギー_だ。

 それは純粋で、原初的なエネルギーだ。

「怖い」とか「悲しい」とかの感情的エネルギーではない、もっとカオスなエネルギーだ。

 それゆえに、この映画を見ると、いつの間にか笑っていることがある。

 怖がっていいのか、笑っていいのか、楽しんでいいのか、嫌悪していいのか、わかんないけどそれが同時にやってくる。

 まだ名前もついていないような、湧き出る謎のエナジー。

 それを顔面にゴンゴンとぶつけられているような、唯一無二な体験がそこにはある。

 今からさかのぼること45年前、1973年の夏、テキサスの片田舎で、ほとんど素人同然のスタッフと役者が映画を撮っていた。

 スタッフの経験は浅く、予算も時間も限られている。

 撮っている作品は、気が滅入るように陰惨な内容だ。

 その場にいたスタッフや役者の大部分が、「この映画、どーせ公開されないでお蔵入りだろうな」と思っていた。

 しかし、その瞬間、その場所に、映画の神が居合わせて、何か超常的な力を与えたのだ。

 いや、そうとしか思えない。

 映画は、歴史に残る傑作となり、マスターフィルムは芸術作品としてニューヨーク近代美術館に永久保存され、監督の名は世界中に轟いた。

 その名はトビー・フーパー。

 今年、2017年8月にその人生の幕を閉じた、奇妙な映画監督。

『悪魔のいけにえ』で、焦燥感あふれるドキュメンタリータッチで生々しい恐怖を撮り上げた彼は、スピルバーグプロデュースの『ポルターガイスト』で、安心感あふれるユルめの大作ホラーを撮り上げ大ヒット、『スペースバンパイア』では脱力エンタメおっぱいホラーに挑戦し、満を持して送り出した『悪魔のいけにえ2』を、デニス・ホッパーがチェーンソー二刀流でもっさりしたチャンバラをするコメディにした。

 かように掴みどころのない監督なのだが、おそらく普通とはちょっと違うユーモアのセンスがこれらの作品に脈々と流れているのだ、きっと。

 そんなトビー・フーパー作品が大好きだ。

 今回は、トビー・フーパー追悼の原稿として、『悪魔のいけにえ』の舞台裏に迫ったインタビュー映画『ショッキング・トゥルース』から、悲惨すぎて面白くなってしまう伝説の映画の裏話をいくつか紹介したい。

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