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日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 女性脚本家ならでは『刑事ゆがみ』

女性脚本家ならではの“女系ハードボイルド”が光る『刑事ゆがみ』もっとみんな、見ればいいのに!

フジテレビ系『刑事ゆがみ』番組公式サイトより

 各方面から「面白いのに! 面白いのに!」との声が相次いでいる低視聴率ドラマ『刑事ゆがみ』(フジテレビ系)。今日は祝日なので視聴率は出ませんが、2日に放送された第4話も、きっと振るわないことでしょう。面白いのに!

 というわけで、今回も振り返りです。

前回までのレビューはこちらから

 今回も謎解きに見どころがあるので、スジは書かないでおきます。FODで見てください。“女系ハードボイルド”とでも呼ぶべき、強くて悲しい女殺人者のお話です。高梨臨に泣かされます。3話までは回を重ねるごとに下がっているようにも感じられた事件そのもののテンションも、今回は取り戻しました。

 今回の脚本クレジットは、メーンの倉光泰子さんと藤井清美さんの連名。藤井さんといえば、このドラマのライバルともいえる『相棒』(テレビ朝日系)シリーズにも参加しているベテラン脚本家です。フジテレビが、これまで『ラヴソング』『突然ですが、明日結婚します』で辛酸を舐めさせた、連ドラデビュー2年目の倉光さんを本気で育てようとしているのがよくわかる布陣です。『めちゃイケ』も『みなおか』も終わるし、ここ20年くらい何も考えずに過去の遺産を食いつぶしてきたように見えるフジが、ようやく変わろうとしているのかもしれません。

■緻密で品がある、優しい人物描写

 ここまで、『刑事ゆがみ』の脚本はすべて女性の脚本家の手によるものです。これ、刑事ドラマでは比較的珍しいことだと思うんです。今後はどうなるかわかりませんが、おそらく女性だけで作っていく方針なのではないかと思います。なぜなら、それこそが成功しているように思えるからです。

 まず特徴的なのが、女性を描く目線です。

 第2話のアラフォー喪女・水野美紀にしても、今回の高梨臨にしても、彼女たちの「個人の意思」というものを明確に提示しています。悲しい環境の中にあり、女性の中でもマイノリティである彼女たちを、決して“被害者”や“弱者”として一面的に扱うことをしない。彼女たちが守るべきものをドラマの中でしっかりと定め、それを彼女たちが能動的に守ろうとしたがために、事件が起こる。「私たちは同情されるために登場したわけではない」という、悲劇を抱えた女性キャラクターたちの強い主張が感じられます。一方で、今回でいえば飯豊まりえが演じた軽薄な口軽OLのように、いかにもステレオタイプな女性像も登場させる。この対比によって、より描きたいキャラの造形が明確になる。

 これは明らかに原作にはなかった視点ですし、倉光さんが『ラヴソング』(最終話レビュー)でやろうとして完遂できなかった、『明日婚』(最終話レビュー)では手を付けることもできなかった作業だと思います。作り手がキャラクターを愛し、キャラクターに寄り添っていることがよくわかるので、ウソツキだったり人殺しだったりする彼女たちに共感を抱くことができる。

 もうひとつ、女性脚本家ならではだなぁと思うのが、男の性欲についての描き方です。

 童貞なのに風俗に興味津々な羽生くん(神木隆之介)や、妙な美学を持っていた第2話の下着泥棒(斎藤工)など、男たちが性欲を丸出しにするシーンでも「ここまでならイヤな感じがしないな」という抑制が効いているように見えるのです。男の側からすると、風俗に行っても下着を盗んでも、なんだかドラマから許されている感じがする。こうした感覚的な「嫌味のなさ」のラインは、なかなか頭で考えて設定できるものではないと思いますし、ドラマの品の良さを担保している部分ではないでしょうか。一方で、今回でいえば姜暢雄が演じた建築士のように、一線を越えた醜い性欲に対しては、容赦なく糾弾する。これによって、おっぱいパブを覗きこんでいる神木さんが、よりかわいらしく見えています。

 まずもって刑事ドラマの面白さは事件のバリエーションと設計によって測られるものだとは思いますが、謎解きがそれなりに緻密に組まれた上に、前述したようなキャラ付けの心地よさがある。エンドクレジットのオチまで、しっかり計算して楽しませてくれる。そんなの、面白くなるに決まってるのにね。もっとみんな、見ればいいのに。

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