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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 全員号泣! 伝説の体操マンガ
じゃまおくんのザオリク的マンガ読み

登場人物全員悲劇! 全員号泣! 伝説の体操マンガ『空のキャンバス』が重すぎる……

 日本を代表する男子体操選手といえば内村航平、そして白井健三。白熱する2人のライバル関係もあり、2020年の東京オリンピックに向けて、体操ニッポンの活躍が大いに期待できるところですが、マンガの世界で男子体操マンガっていうと……正直ほとんど思いつきません。しかしただ一つ、突き抜けた存在の作品がありました。

 そう、男子体操マンガの金字塔といえば、今泉伸二先生の『空のキャンバス』をおいて他にないのであります。「週刊少年ジャンプ」(集英社)誌上において、1986年から87年にかけて連載され、連載期間こそ長くないものの、なんの予兆もなく突如として登場した体操マンガは、その感動的ストーリーでジャンプ読者に多大なインパクトを残しました。

『空のキャンバス』の凄さは、男子器械体操という競技の地味さを補うかのように徹底的に盛り込まれた「泣き」要素にあります。主人公の北野太一やその周囲の登場人物に、これでもかと言わんばかりに次から次へと襲いかかる苦難。そして作品終盤では、ページをめくるたびに誰かが号泣しているという……これほどまでに暑苦しく息苦しく、あざといまでにお涙頂戴な展開のマンガは、ジャンルに関係なく、なかなかお目にかかれるものではありません。

 主人公、北野は14歳の中学生。幼少期に出会った、月面宙返り(ムーンサルト)ができる運動神経抜群の少年「あいつ」の存在を追いかけて体操に打ち込み、天才的な才能を開花させます。しかし、太一はその「あいつ」が崖から落ちたのを助けた時に脊椎に負った大けがが原因で全身麻痺に陥り、回復した今も、いつ再発するかわからないという切迫した状況にあります。

 本作品のヒロイン・赤城榛名は、かつて体操の五輪選手だった赤城コーチを父に持つ、女子体操のジュニアチャンピオン。そんな榛名の家に、体操のトレーニングをすることになった太一が居候することになります。少年漫画の主人公らしく、エッチなイタズラを連発する太一に榛名はビンタで応酬するなど、ツンデレ上等のラブコメ要素が盛り込まれています。

 そして実は、幼少期の榛名こそ、太一がずっとライバルとして追いかけてきた「あいつ」だったのです。しかし、ずっと追いかけてきたライバルが女だったことを知ったら、ショックを受けて立ち直れないかもしれない……そう思った榛名は、真実を告げることを封印します。おバカなラブコメ展開と、登場人物たちのさまざまな苦悩が表裏一体となってストーリーが進んでいきます。

 というわけで、『空のキャンバス』の凄いところを、以下にまとめてみました。

■北野太一に襲いかかる悲劇の総量が半端じゃない

 体操でジュニアチャンピオンを狙えるほどの圧倒的な才能を持ちながら、幼少期の脊椎のケガが元で、競技中に突然腕が動かなくなったり目が見えなくなる、などの後遺症を抱えています。

 医師には、いずれは全身が麻痺して死ぬ、とサジを投げられた状態。そんな中、宿命のライバル「あいつ」と闘うことだけを目標に気力で体操をしているのですが、その「あいつ」は、実は女の子。しかも一つ屋根の下の同居人、赤城榛名です。しかし太一は作品中で、決してその事実を知らされることはないのです。なんという悲劇!

 作品後半、成功率は限りなく低いが、うまくいくかもしれないという難手術を受け、見事手術は成功! 奇跡が起こったかに思われましたが、手術後、記憶喪失に陥り、今までのことをすべて忘れてしまいます。なんという悲劇!

 記憶喪失のまま、過去を思い出すために体操に打ち込む太一、次第に記憶が蘇ってきます。そして、ついに記憶が回復! 再び奇跡が起こったかに思われましたが……全身麻痺の症状が再び太一を襲います。なんという悲劇!

 最初から最後まで、太一が、とにかく不憫なのです。スポーツマンガ界における悲劇のキャラクターの代表格といえば、心臓病を抱えたままサッカーをする、キャプテン翼の三杉くんですが、正直、北野太一のほうが数段上の悲劇を背負ってます。

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