テレ東から新たな「素人番組」誕生か? 『あの人の通帳が見てみたい!』で垣間見えた市井の人の人生
預金通帳を見て、我々は一喜一憂する。「今月は厳しいなぁ……」なのか「これくらい貯金があれば余裕だな」なのか、それぞれの感慨は他者からは知るよしもない。だって、当人の貯金残高がいかほどのものなのか、普通は教えてくれないし。
そんな“完全プライベート”とでも呼べる通帳を見せてもらおうと、街行く人にお願いする番組『あの人の通帳が見てみたい!』(テレビ東京系)が10月6日に放送された。
もしも、道すがらで「通帳を見せてください」とお願いされたら、皆さんはどうする? たいていの人は「ちょっと見せられないですね……」と、あっさりお断りするはず。しかし、極稀に「いいですよ」とご開帳してくれる人がいるから驚く。そういう人は、さぞかし貯め込んでいるんでしょうね……。
■低い残高でも、意外と見せてくれる預金通帳
と思いきや、そうとも限らないのだ。例えば、下北沢の往来で通帳を見せてくれた女性の貯金残高は3万2,683円であった。彼女は、飲食店でアルバイトしながら女優としての成功を目指す19歳だ。夢追い人に、貯金残高の“多さ”“少なさ”は大した問題ではないらしい。
銀座で休日デートする新婚夫婦も、通帳を見せてくれた。夫の持つ個人通帳を見ると、残高はわずか5万4,007円。初めてそれを見た妻は「少なっ!」と驚きのリアクションだが、表情は笑顔のまま。その度量の深さに思わずホッとしてしまうが、それもつかの間、夫が30万円もの大金を数カ月前に引き出している事実が明らかになり、低めのテンションで「何に使ったの?」「結構、デカくね?」と問い詰め始める。夫は夫で、「何かデカい買い物したかなあ?」と思い出せずじまい。この不穏な空気には、見ているこっちがヒヤヒヤしてしまう。だって、新婚さんなのに……。
しまいには「スケジュール帳見たら思い出すんじゃない?」と、夫に確認を迫る妻。すると、夫はようやく思い出す。そして妻を隔離させ、大金を引き出した理由を教えてくれた。その真相は「プロポーズの時のジュエリーなど、彼女へのプレゼントをいろいろ買ったので」とのこと。なんだ、良かった。残高は少ないけど、幸せいっぱいじゃないですか!
■貯金額3,724円でも娘から尊敬される、笑顔の父親
預金通帳を見ると、地域文化も透けて見える。例えば、沖縄で営業中の老舗漬物店の3代目店長が今回は預金通帳を見せてくれた。彼は、交際中の彼女と間もなく結婚しようというタイミング。将来に備え貯蓄しておくべき時期だが、残高は44万8,850円と意外に低めであった。しかも自営なので、3代目に入る給料という給料はない。平均月収は、なんと10万円である。
だが、2人に不安はない模様。沖縄には「ゆいまーる」という“助け合いの文化”が根付いており、物や食べ物をあげたりもらったりしながら生きていくことができるのだ。必ずしも、貯金残高の数字に将来性や安定性、幸せのレベルが反映されているわけではなかった。
極めつきは、銀座で通帳を見せてくれた男性。内装業の会社を営む社長さんだが、貯金残高はわずか3,724円であった。いや、これはさすがにヤバいんじゃないか……。
この残高の低さには理由があるらしい。通帳の欄をさかのぼると、「送金 390,000」と記入されている。バツ1のこの男性、元妻へ月およそ40万円の養育費を15年間(180カ月)払い続けていたのだ。今までの送金額の合計は、およそ7,200万円!
実はこの時、男性の娘さんも近くにいたことが判明。もちろん、番組は娘さんに父の通帳を見てもらうことにする。そして娘さん、通帳に記入されている送金額を初めて目にし「ヤバいね」と一言。そして「すごいと思います。払わない人もいるのに」「大事な存在です」と、父親へ尊敬のまなざしを向けている。一方、父は父で「責任感しかない」「子どもに好かれるのが一番だね、女房に好かれなくてもいいから(笑)」と、まぶしい笑顔を見せるのだ。「娘の幸せがあれば、貯金の少なさもなんてことない」と言わんばかり。貯金残高の低さもなんのその、笑い飛ばしてみせている。
なるほど、“通帳の中身”をのぞき見すると人生や生きざまを垣間見ることができる。そして、残高の数字が即ち幸せの度合いを反映していると限らないことも判明した。
■ネット上では、番組に対する苦言も
一般人の素性に迫るコンセプトは、同局の人気番組『家、ついて行ってイイですか?』や『Youは何しに日本へ?』等を連想させる。労力を惜しまない番組作りはテレ東の真骨頂で、注ぎ込んだカロリーは番組のクオリティとして見事に花開いたといえるだろう。
ただ、今回は「貯金」というスレスレの線を扱っているので、危険とも背中合わせ。ネット上では、番組の危険性を指摘する書き込みも散見される。せっかくの良番組なので、もしも続編があるのならば、くれぐれも安全性には強く留意していただきたいと願うばかりだ。
(文=寺西ジャジューカ)
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