本物の極道だった“元アウトローのカリスマ”瓜田純士が見る『アウトレイジ 最終章』
#インタビュー #瓜田純士
――その他、ヤクザがリアルだった場面はありますか?
純士 塩見三省みたいな顔をしたヤクザは、どの義理場に行っても必ず1人はいます。今回、痩せて弱っちくなっていたけど、かえってそれがリアルだったと思う。花田(ピエール瀧)っていう金稼ぎのうまい有望な若い衆を抱える身でありながら、本家からは年寄り扱いされたり、信頼している人間のタマを取るように命じられたり。年老いちゃったから丸め込まれて、組織維持のために使われそうになる、ちょっと可哀想な立場。そういうのが伝わるうまい見せ方だったと思います。
恭子 西田と塩見が疲れ切った顔で車に乗っているシーンが可笑しくて、私、吹き出しちゃったわよ(笑)。どんな看板を背負っていようが、寄る年波には勝てない。こういうロートルヤクザ、実際にいるなぁと思って。
麗子 ウチは笑うよりも心配になりましたよ。老人ホームの発表会を見ているみたいで痛々しくて……。
純士 武も岸部一徳もそうだけど、映画は画面がデカイから老いを隠せず、加齢臭全員集合みたいになっていたのは否めない。でもその一方で、フレッシュな若手もいたじゃん。キャバクラで踏ん反り返っていた池内博之。彼はハーフ特有の顔の怖さが不良にハマる。現代風ヤクザとしての実在感がありましたね。逆に、ヤクザとしての実在感が一番薄かったのは、武が演じた大友かな(笑)。彼の振る舞いは、ヤクザじゃなくてただのチンピラ。刑事に絡んだり凄んでみせたり、出所祝いの会場で道具を出したり。実際は大物のヤクザほど刑事を立てるし、義理場や祝いの席はあえて避けてケンカをしますからね。大友は最低ですよ(笑)。チンピラの極み。
恭子 今回、武さんの見せ場が少なかった気がするなぁ。西田ばっかりになっちゃっていたような……。
純士 確かに。昔の北野映画はぶっちぎりの独りよがりでそれが面白かったのに、今回は監督が、自ら呼び集めた大物役者に気を使って、彼らを立て過ぎちゃったせいなのか、誰が主人公なのかわかりづらくなっていたかも。西田や塩見の演技はすごいんだけど、それは小出しにするからいいんであって、今回は前面に出し過ぎて安くなっちゃった印象がありますね。全員のセリフを半分とか3分の1とかに切っちゃっていいから、もっと他に描き込んでほしい部分もあった。
――それは具体的には?
純士 今回、繁田刑事(松重豊)がキレる場面があったじゃないですか。あれ、本当に絶妙なタイミングだと思うんです。人が発狂する瞬間って、あんな感じだよなぁと思って、すごく共感できたんだけど、上司と決別したあと、武と大森が階段を上がってくるシーンだったから、上で待っているのは繁田かと思いきや、違うんだもん。「刑事としてではなく、俺個人として言うが、大友、往生しろ」とかのシーンがあるのかと思いきや、ない。みんなが自分のやってきたことにケジメつける映画かと思ったら、そうでもない。
恭子 西田に尺を取られちゃって、そこらへんに時間を割けなかったのよ、きっと。
純士 ピエール瀧にしても、ドMの変態ヤクザでいくんなら、女性にもっとひどいことをしたりさせたりしている描写がほしかった。じゃないと、ただのコスプレになっちゃう。
恭子 それは、いろいろ問題があって映像化できないんじゃない?
純士 直接的な暴力描写や性描写は無理にしても、もっと車で移動している最中とかヤクザ的な時間を過ごしている間に、上の人がいる前でわざと変態っぽい電話をかけてニヤニヤしているシーンとかがあったほうが、あの末路の爆発力も増したのに。序盤、済州島でヘタを打ったピエール瀧が、大友たちがいなくなったあとに、自分とこの若い衆をボコボコにするシーンがあったでしょう。ああいう八つ当たりって、実際のヤクザ社会でもよく見ることで、すごくリアリティーがあってよかったから、もっとあの温度で最後まで来てほしかったです。
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