本物の極道だった“元アウトローのカリスマ”瓜田純士が見る『アウトレイジ 最終章』
#インタビュー #瓜田純士
――その他、いいなと思った役者はいますか?
純士 一番癖があってよかったのは、ピエール瀧ですね。凄み方もビビリ方もよかった。実際はどうだか知らないけど、あの人ってたぶん、夜の繁華街とか飲み屋とか、不良がたくさんいるような場所に、長い人生の中でいっぱい行って遊んできた人なんじゃないかな。だからああいう台本を渡されても、すぐに「じゃあ俺流でいきますよ」と演じることができたんだと思う。ああいう不良、マジでいますからね。新体制が発表されて自分が昇格したとわかった途端、調子に乗ってポケットに手を突っ込んで大声で誰かと電話し始めて岸部一徳から呆れられる場面なんて、本当にリアル。韓国で大友(北野武)に向かって、「ところで、お前の名前は?」って聞いたあとの目つきの悪さとかもね。ああいうのって、ただテレビや映画に出て育ってきただけの俳優ではできないことなんで、たいしたもんだなと思います。
麗子 タムケンにしか見えへんかったけどな(笑)。
純士 あとは、西田敏行の演技も圧巻でしたね。そこらへんの三下っぽく振る舞ったらいけないんだ、俺は大物ヤクザなんだと言い聞かせながら役を全うしたと思うんです。その徹底ぶりがよかったですね。「大友、来ていませんよ」って場面でも、二流の役者だったら「え? 来てねえのか?」と泡食った演技をしそうなもんだけど、「それならそれで別にいい」といった感じで動じない。そういう不敵なリアクションが多々あったじゃないですか。
恭子 あれがウザかった~。
純士 あの、常に上から見下ろしている感じがいいんだよ。
麗子 ウチもやねん!
恭子 何、私だけ除け者にして、夫婦で意気投合してんのよ!
純士 出所者を励ます会で、西田がマイクで喋り出すところなんかも「キター!」「さすがだな」って思いながら見ていました。最後まで西田は武の期待値以上のことをやったと思いますね。
麗子 西田敏行って、ウチのお父さんにソックリやねん(笑)。
恭子 ウソ? あんなオッサンなの?
麗子 それが、懐かしくて懐かしくて(笑)。
恭子 私は西田が、ウザくてウザくて。早く殺されていなくなれ! と思っていたけど、全然いなくならないからイライラしたわ。
麗子 イヤやーーー! そんなん言わんといてください。
恭子 あれは、よくいるタチの悪いヤクザもんだよ。本当に根性の汚い奴。
純士 でもそれがよかった。本物の不良っぽかったじゃん。あと、西田がすごいな、貫禄勝ちだなと思ったのは、大杉漣のところに行って、啖呵を切る場面。誰かに話をつけに行くのって、相手が1人だとしても緊張するじゃないですか。それを映画の中の話とはいえ、西田は他のヤクザも大勢見守る中、今から下克上してやるという一世一代のシーンを、さらっと演じ切ったでしょう? あの貫禄がすごかったよね。
麗子 すごかった!
恭子 似た者夫婦だから意見も一致するのかねぇ……。お父さんに似ているから、なんでもよかったんじゃないの?
麗子 ちゃうわー!
純士 あと、張会長(金田時男)から明らかにシカトされているにもかかわらず、西田が行儀悪い格好で延々と話しかけ続けるところも、いいんだわ。
恭子 ああいうのが私は鼻についた。やり過ぎでしょ。ああいうヤクザ、実際にいることはいるけどさぁ。
純士 そう、ああいうのが本物のヤクザなんだよ。武と大森が銃を持って、屋上駐車場で花菱会の面々と向き合うシーンでも、車の窓がスッと開いて、西田が「オイ、大友。今までのことは一回水に流して」みたいなことを言うじゃないですか。あのときもまだ「俺のほうがお前より貫目が上だぞ」っていう態度を崩さない。ヤクザの上層部って、ああじゃなきゃダメなんですよ。それを演じ切った西田は只者じゃない。一級品の役者ですね。
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