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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 秋に見たい、人間ドラマ3選
ベテラン海外ドラマライター・幕田千宏の「すごドラ!」

正統派から変化球まで! 人間ドラマ3選

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 10月に入り、ようやく空気も秋めいてきた。秋といえばスポーツの秋、食欲の秋などいろいろあるが、ここはやはり芸術の秋らしく、ぐっと心を揺さぶるヒューマン・ドラマの注目作を紹介しよう。

 アメリカでのドラマ制作数が急増し、その多くが日本にも上陸しているが、かなりのシェアを占めるのが犯罪ドラマだ。しかし、昨年全米でスタートするなり大きな話題を呼んだ『THIS IS US 36歳、これから』は、久しぶりに登場した正統派ヒューマン・ドラマだ。三つ子の誕生が控えているジャックとレベッカの夫婦、シットコムの主演でブレークした俳優ケビン、肥満に悩むケイト、成功を手にしたエリート、ランドールという36歳の5人を中心に、それぞれの日常を丁寧につづった本作は、派手な事件が起こるわけでもなく、きらびやかなセレブライフが描かれるわけでもないシンプルなストーリーだ。だが、そんな一見地味に思えるドラマがなぜ、全米で話題を呼ぶほどヒットしたのか?

 実は、本作の第話のエンディングには、大きな驚きが隠されている。そしてそうした驚きや謎が毎回ナチュラルに散りばめられ、思いがけない展開に発展していくのだ。犯罪ドラマのような血生臭さは皆無であるのに、上質なミステリーを見るかのようなひねりの効いたストーリーラインがこのドラマの肝となる。かといって、変に斜に構えるのではなく、誰もが共感を覚えるようなキャラクターの心の機微を丹念につづる本作は、あくまでも普遍的なドラマに基軸に置いているからこそ、登場人物の心の動きがストレートに伝わってくる。時に驚き、時に感動し、気がつけば心癒される正統派でありながら革新的でもある、稀有なヒューマン・ドラマなのだ。

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