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日刊サイゾー トップ  > 「性具+催眠音声」の可能性の追求
快楽の求道者の終わらない旅路

「アダルトグッズ+催眠音声」の可能性を追求するトランスイノベーションへの誘い

■常に求めるのは前とは違う作品をつくること

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 常に「攻めの姿勢」といえばよいだろうか。より新しい快楽を求め、それを多くの人に知ってもらいたい。そんな思いが、優れた催眠音声の作家には通底しているという。ダウンロード販売サイトを見てもらえばわかるだろうが、今回の作品を担当したキャンドルマンも、B-bishopも、1つとして似通った催眠音声をつくってはいない。

 ひとつのテーマを繰り返すのではなく、次々とテーマやストーリーに挑戦し続けている。これは、いわゆるアダルトメディア全般の中では、特異な現象だと思う。

 エロマンガやアダルトゲームなどに見られるように、作品には、ある程度の「定番」というものが存在している。とりわけ、アダルトゲームは定番の宝庫。ある程度、似たり寄ったりの印象を持たせて間口を広げて、その中で新しい要素を忍ばせて作家性を維持している作品が多いように思えてならない。

 けれども、催眠音声は、そのような意図がほとんど見られない。常に、新しいテーマへと挑戦し続けているのだ。

「だから、異端ともいわれるそうです。でも、自分の趣味嗜好よりは、シチュエーションは今までにないものを求めています。最重要は、今までにない新しいものです」

 きっと、そのほうが楽しいに違いないと思った。そして、自分もそうしなければならないのだとも。私自身もまた、いつの頃からか安穏とした定番の中で満足していることは否めない。コミックマーケットでも、カタログを隅から隅までチェックして、新たなジャンルを開拓しようとする情熱は、薄れている。もう、自分の性的な嗜好がある程度はっきりとして、その枠の中で満足すればよいと思っている部分がある。

 だいたい、男の娘とTSと、いくつかの特殊性癖島を回ればコミケは終了。無駄にお金も使わないし、疲れないからいいじゃないか。そう思う一方で、自分の行動にどこか疑問もある。嗜好が先鋭化したといえば論理的で納得しているように思える。

 けれども、まだ見ぬ新たな「これは、興奮する」という嗜好が、コミケに、あるいはネットの広い海にはあるのではないか、と。T氏の言葉から、得たのはそれらを探求することの楽しさであった。

 快楽への探求は、あらゆる嗜好を偏見や躊躇などなく、素晴らしいものとして捉え誘うのだと思った。そんな意志が明確に感じられたのは、催眠音声では数多く制作されているTS、すなわち女体化ものに話題が広がった時だった。

「作家さんの多くは、女体化してやられているシチュエーションは、自分が女になって、やられている体で制作しているんだと思います。開発時にはけっこう興奮しているはず。だって、書いている時というのは、音声を聞いているようなものですからね」

 作家は、自分がなりたいもの。そして、されると気持ちいいことを描いている。そうした作家と気持ちを通じ合わせて、より多くの人に、新しい世界を届けようというT氏には、なんら臆するところが感じられなかった。

「創作物はなんでもそうだと思うのですが、自分から入ろうとしないと気持ちよくならないものだと思うんです」

 長い人生の中で型にはまったような日常を送っていれば、知ることのできる快楽はわずかなものだろう。けれども、ほんの少しだけ躊躇することをやめれば、そこには無限の新しい世界が広がっている。そこで出会う、催眠音声の気持ちよさ。それは、単なる即物的で刹那的な快楽ではない。新たな世界を知る歓びもあれば、何かが満たされた気持ちもある。なぜなら、ほかのメディアと違い催眠音声においては聞いている自分自身が、登場人物であり主役である。いうなれば、催眠という方法で異世界転生をしているようなものである。していることは受け身一辺倒でありながら、極めて能動的なのが催眠音声なのだ。

 そんな世界をアダルトグッズと組み合わせることで、さらに充実したものへと展開させようとするT氏の情熱に、共感は止むことがなかった。

 帰り道。このインタビューをどうやってまとめていくか、しばし考えた。書き手である私も、どこまで自分をさらけ出して書くべきかと……。
(取材・文=昼間たかし)

■トランスイノベージョン公式サイト
http://trance-innovation.com/
Twitter @trance_inn(https://twitter.com/trance_inn

最終更新:2018/12/12 15:55
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